ツイッターやフェイスブックの利用者増にともない、テレビ局が番組内でSNSを活用するケースが見られるようになってきた。SNSがテレビ広告市場の好況に「一役買っている」と報じるメディアもある。
一方で、テレビ番組に関する情報を得るのは「番宣」や「新聞の番組欄」とする人が今も多数を占め、SNSと答えた人は2割に満たないのも現実だ。
学生同士はSNSで「あの番組おもしろい」と教え合うが…
調査会社MMD研究所が2012年5月15日に発表した「携帯電話、スマートフォン所持者のテレビ視聴に関する実態調査」では、「テレビ番組を視聴する際の情報収集」「新しいテレビ番組を知るきっかけ」についてそれぞれどこを情報源としているか、500人から有効回答が寄せられた。
いずれの設問にも、テレビなどで閲覧する電子番組ガイド、新聞の朝刊のテレビ番組欄や番組紹介記事、番組宣伝のCMや紹介番組、との回答が「トップ3」だ。番組情報の収集では「電子番組ガイド」を頼っている割合が55.6%に上る。「新番組を知るきっかけ」でも「番宣CM」が47%に達していることから、「テレビ番組を知るのはテレビから」というスタイルが今も定着しているのが分かる。
これに対して「ツイッターで知人や友人が発信している情報」を活用していると答えた人は、いずれも10%強だ。フェイスブックやその他のSNSとの回答は6%程度にとどまり、SNS全体でも2割弱。世代別でみると、10代では2割がツイッターによる「知人情報」を活用している半面、20代以降になるとその割合は1割を切る。
これに対して、テレビCM市場では「SNS効果」が出ているとする向きもある。2012年5月17日付の朝日新聞朝刊では、テレビで流れたCMがツイッターで話題になり、動画投稿サイト「ユーチューブ」での再生回数が4日後には20倍以上に急増した事例を紹介。在京民放テレビ局の好決算や、東日本大震災前を上回る勢いのCM市場の活況に、SNSが「力を貸しているとの見方もある」と伝えている。SNSの「口コミ力」を評価する論調だ。
上智大学文学部新聞学科の碓井広義教授(メディア論)に取材すると、「周囲の学生は確かにSNSを使って『あの番組おもしろい』と教え合ったりしています」と話す。しかし、世代を問わずSNSを通じて話題が広がりヒット番組、ヒットCMが生まれるかといえば、懐疑的だ。番組情報をSNSから得る人で、20代以降が数%にとどまったMMD研究所の調査結果からも、「SNSとテレビの『親和性』が言えるのは、若者の世代に限定される」と考える。