大阪市が市職員に対して行った「入れ墨の有無」を問うアンケート調査の結果が、2012年5月16日にまとまった。
教職員を除く全職員3万3000人中、「他人の目に触れるところに入れ墨を入れている」と答えたのは110人だった。一般的な民間企業でも珍しいのではないかと思われる数字だ。
環境局は73人、交通局は15人が「入れ墨入れている」
「入れ墨アンケート」の結果について橋下徹大阪市長は5月16日、報道陣に
「100人を超える人数の入れ墨というのは、やっぱり組織として僕は異常だと思っています」
「公務員では有り得ないでしょう。僕が民間企業でここまで解放的な組織というのはあまり聞いたことがないですねぇ」
「役所でありながら100名を超える人数が入れ墨をしている。それについても僕以前の市長が大号令をかけてこれを問題視しなかったのはやっぱりおかしいです」
と語った。
入れ墨問題の発端は12年2月、児童福祉施設で働く30代の市役所職員が子どもたちに入れ墨を見せて脅していたという件だ。橋下市長は市職員の服務規律を徹底させるために特命チームを設立、入れ墨を入れている職員がどれくらいいるか実態を把握するため、5月1日からアンケートを開始した。
腕やひざから下など、他人の目に触れる部分に入れ墨を入れていると回答した110人のうち、「特に見えやすい部分」に入れているのは98人だった。全体の7割近くを占める73人が環境局の職員で、常に客の目に触れるバスの運転手や地下鉄の運転手を含む交通局の職員も15人いた。
橋下市長は入れ墨を入れている職員の処分について、5月14日に報道陣の前で
「原則は消してもらいますけども、日本の憲法体系の中で強制はできないし、懲戒免職はダメでも分限(免職、職務態度などが公務員として不適格とみなされた場合に行われる)は有り得るんじゃないかと思ってますが、法的に色々考えれば人事の配置で対処しなきゃいけないんでしょうね」
と具体的に話した。
入れ墨対応、街の声は支持・不支持半々
5月17日放送の「スッキリ!!」(日本テレビ系)では、橋下市長の「入れ墨アンケート」を支持するか、しないかの街頭アンケートの結果を放送した。大阪で30人に聞いたところ支持が13人、不支持が13人、どちらともいえないが4人だった。東京・新橋のサラリーマン25人では支持が15人、不支持が10人。渋谷の若者25人では支持が13人、不支持が12人だった。不支持の理由は「一律に処分するのは反対」「分限免職は処分が重すぎる」というものだった。
また、仙台市の奥山恵美子市長は5月16日の定例会見で、「公務員は多くの市民に接するのが仕事なので、市民が不快感を覚えるようなら考えなければならないが、入れ墨が即悪いということではなく、それを楽しむ文化もあると思う。程度の問題で、良識に沿って身だしなみを整えればよいのではないか」と話した。入れ墨をそこまで問題視する必要があるのか、と見る人も少なくないようだ。
とは言え橋下市長は「原則は消してもらう」と話すなど、一貫して毅然とした態度で臨む姿勢を示している。大阪市職員はこれまで通りに仕事をするには入れ墨を消す必要がありそうだが、簡単に消せるものなのだろうか。
美容整形大手の高須クリニックに聞いてみたところ、若者の間でタトゥーがブームになって以来、除去手術に来る人は年々増えているという。除去費用はレーザー手術の場合が1cm四方で1万500円から、切除縫縮手術の場合が1cmあたり2万6250円から。大掛かりな入れ墨を消す場合、剥削手術がハガキ大サイズで52万5000円、皮ふ移植がハガキ大サイズで63万円と高額になってくる。除去手術の最中は麻酔をかけるので痛みはないが、術後に傷が痛むことはあるかもしれないという。1度の手術で完全にきれいになるというわけでもなく、何度か通って除去していくという場合が多いようだ。