新興市場での成長力が魅力
ところで、いすゞとGMの関係は1971年の資本提携開始にさかのぼり、長く深い。GMはいすゞのディーゼルエンジン技術を高く評価し、いすゞはその開発・製造者としてGMと共存共栄してきた。1990年代以降、いすゞが経営危機に陥った際にはGMが助け船を出し、一時はいすゞへの出資比率が49%にまで上がった。しかし2000年代にはGMが経営危機に陥り、2006年に全いすゞ株を手放した。
一方、トヨタはその2006年にGMに代わるように5.9%を出資。しかし、リーマン・ショックなどから、今日にいたるも具体的に合意した協業内容がないどころか、協議自体が凍結に近い状態だ。
VWとは2010年から提携協議をしているが、こちらも特段の成果がないまま、ずるずる時間ばかりが経っている。
こうして見ると、いすゞを中心に「世界のビッグ3(GM、VW、トヨタ)」が提携交渉相手として置かれている状況でもある。もっと言えば、いすゞがビッグ3を「手玉に取っている」のかもしれない。
トラックメーカーというと地味な印象だが、いすゞは「ピックアップトラック」と呼ばれる乗用車とトラックが一体となったような新興国や北米で人気の車も得意。また、ピックアップトラックを含めた商用車のシェアはタイで1位、インドネシア3位と企業としての成長力は魅力的。経営危機を克服し有利子負債もピークの3分の1以下の2000億円台となり、「抱え込むリスク」もない。
それだけに世界のビッグ3といえども提携交渉はいすゞが優位。細井社長を中心としたグローバルな駆け引きがしばらく展開されそうだ。