橋下徹大阪市長は現在、大飯原発(福井県)再稼働か電力不足かの二者択一ではなく、夏のピーク時電力を節電工夫で乗り切る「第3の道」の案を策定する方針を示している。これまでも、再稼働方針の民主党政権を激しく批判する発言で注目を集めてきた。
一方、4月末には「橋下氏 大飯再稼働容認も」などと報じられた。橋下市長の再稼働に対する反対・慎重姿勢に「後退」の兆候は出始めたのか、それとも姿勢に変化はないのか。
「反対一辺倒から再稼働を視野に入れた発言に…」と質問
「橋下氏 大飯再稼働容認も 『節電負担 住民不支持なら』」(読売新聞)、「橋下氏、再稼働容認も 『節電、我慢無理なら』」(毎日新聞)――2012年4月26日会見の橋下市長発言を受け、こんな見出しの報道が流れた。記事では、
「橋下市長はこれまで安全性を確認する手続きが不十分なことを理由に原発再稼働に反対してきたが、『理想論ばかり掲げてはだめ。生活に負担があることを示して府県民に判断してもらう』と強調した」(毎日新聞、27日付朝刊)
などと、26日会見の発言を伝えている。「負担」とは基本的に節電のことだ。
翌27日の囲み会見では、男性記者から「昨日になって、一昨日までの反対一辺倒から再稼働を視野に入れた発言に変わってきたように思うんですけど」と質問が出た。
橋下市長は「いやいや」と否定した。「再稼働手続きはおかしい」という橋下市長らの「メッセージ」が「浸透」したと述べた上で、「次は(府県民への)負担を示した上で、受け止めてもらって、乗り越えていきましょう、というステージに変わった」と説明した。橋下市長は従来、「安全性の確認」をめぐり、政府の姿勢を批判していた。
26日会見の記事を受け、27日会見で質問した男性記者のような疑問をもった人は少なからずいたようだ。ネット上でも、そうした疑問が少なからず出た。
大阪府と大阪市でつくるエネルギー戦略会議の座長である、植田和弘・京大教授に5月15日、聞いてみると、「先ほど(橋下市長)本人と話しましたが、(従来の)姿勢は変わっていないと言っていました。変わっていませんよ」と話した。
「速やかな原発全廃」提案方針、「全く変わっていない」
別の府市統合本部の関係者も「電力需給がひっぱくする夏を直前に控え、いつまでも安全性の議論だけをしていては、現実問題として解決できない。節電など住民の負担の方に話の力点を移し、協力をお願いしようというもので、姿勢は全くブレていないと思っています」と話した。
また、6月の関西電力株主総会で、大阪市が「速やかな原発の全廃」を提案する方針も「全く変わっていない」とも話した。
橋下市長は2月9日の定例会見で、原発再稼働について、「ストレステストがOKだから再稼働とはならない。安全性が確認できても必要性の議論を次にしないといけない」と、「2段階」で議論する考えを示していた。4月中旬ごろまでは「安全性」をめぐり、再稼働を批判する発言が目立っていた。
しかし、ツイッターなどでは、橋下氏の「姿勢変化」を指摘する声が5月に入っても一部で出ており、「姿勢変化」を前提に、橋下氏を批判したり、逆に「君子は豹変してもいい」(5月7日)と評価したりする声が紹介されている。
「こんな状況下で、国策のために原発を再稼働せよ!ってそれこそ無責任ではないでしょうか?」(3月22日、橋下市長ツイッター)
といった、発言が注目されていた橋下市長だけに、4月26日会見に関する「再稼働容認も」報道を受け、「府県民に判断をゆだねる形で、自身の反対姿勢を後退させたのではないか」という憶測も働いているようだ。