ソニーとパナソニックは、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビ事業で提携交渉に入った。実現すれば、世界を舞台に激しく競ってきた両社が主力事業で手を組む初めてのケースとなる。
有機ELテレビは、2012年内に韓国のサムスン電子やLG電子が55型の大型テレビを発売する予定だ。それでなくてもテレビ事業は液晶テレビなどで韓国勢との価格競争に敗れてシェアを奪われ、苦境に陥っている。「日の丸」電機メーカーの巻き返しが注目される。
「お荷物」になっているテレビ事業
2012年3月期連結決算で、ソニーは4566億円、パナソニックは7721億円の最終赤字を計上した。赤字幅はいずれも過去最悪。両社とも、その大きな原因がテレビ事業の不振だった。
2012年5月15日のソニーとの提携報道にパナソニックは、「検討もしていない」と話した。
しかし、パナソニックは追い込まれている。11日に発表した13年3月期の事業方針によると、白物家電や電池などの事業を拡大し、最終損益を12年3月期の赤字から500億円の黒字に転換させるとした。大坪文雄社長は、「今年度はかつてないほど成果が問われる。何としてもV字回復を実現する」と語ったが、テレビ事業の営業損益は今期も赤字を見込んでいる。
一方、有機ELは次世代テレビの「本命」とされる。映像となる画素に自ら発光する有機材料を使うことで、液晶テレビより薄く、消費電力も抑制でき、さらにコントラストが鮮明でくっきりと表示できるのが特徴とされる。大型パネルを安定して量産する技術の開発が「勝負どころ」といわれている。
つまり有機ELテレビが今後のテレビ事業の主戦場となるわけで、韓国のサムスン電子などがすでに製品化を進めている。有機ELについて、大坪社長は「すべて自前で投資する可能性は極めて低い。ベストパートナーと組んでやっていくことになる」などと、パネルを外部調達する考えを明らかにし、他社との協力を模索する姿勢を示していた。
パナソニックは、「有機ELテレビは事業化に向けた検討を進めているところ」とコメントした。
収益性と商品性を見極める
一方のソニーは2007年、世界に先駆けて11型の有機ELテレビを約20万円で発売した。しかし、液晶テレビなどに比べて値段が高く、大型化への対応にも遅れたことから普及が進まず、10年に家庭向けから撤退し生産中止に。「現在は在庫も残っていません」という。
そのため、有機ELについては自前の技術をもっているが、「国際競争の中で、収益性や商品性を探りながら、どのような方法が一番よいのか、消費者に受け入れてもらえるのかを考えたい」と話している。
一連の報道について、「当社から発表したことではなく、コメントすることはありません」としながらも、他社との提携については含みを残した。
有機ELテレビへの意欲も感じられる。家庭向け有機ELテレビの再投入に向けては、11年末にサムスン電子との液晶合弁事業を解消した傍らで、台湾液晶パネル大手の友達光電(AUO)と量産で提携する交渉を進めているともいわれる。
とはいえ、ソニーのテレビ事業も前期まで8期連続で営業赤字。平井一夫社長も、「14年3月期の黒字化を目指す」とする従来の計画を繰り返すにとどめた。
NPDディスプレイサーチの調べでは、薄型テレビの世界シェア(2011年、金額ベース)のうち、韓国のサムスン電子とLG電子で37.5%を占めている。追う、ソニーとパナソニックはあわせて18.4%だ。