大手SNSの中では「一人負け」が指摘されるミクシィの身売り話が唐突に報道され、様々な憶測が広がっている。身売り話を報じたのは、ビジネス誌「日経ビジネス」のウェブサイト。同サイトが、ここ1年ほどでIT関係の大きな独自ネタを報じるのは3度目だ。これまでは「1勝1敗」といったところだ。
ミクシィは報道を否定しているものの、フェイスブック(Facebook)では、関係者とみられる人物が身売りを前提とした書き込みをしたとの指摘もあり、今後の動向が注目されている。
売却交渉への参加を打診と書く
グリーや、「モバゲー」を運営するディー・エヌ・エーが、ソーシャルゲームの収益で急成長を遂げる一方、ミクシィは収益の大半を広告に依存するモデルから脱却できず、成長が鈍化。国内大手SNSでは「一人負け」が指摘されていた上、実名制のフェイスブックの国内展開が本格化し、さらに苦しい対応を迫られていた。
日経ビジネスのサイト2012年5月15日未明に「ミクシィ、身売りを検討 突然の不自然な経営体制刷新」と題して掲載された記事は2300字以上に及び、
「社長の笠原健治氏が保有する約55%の株式について、売却に向けた交渉への参加を複数の企業に打診し始めた。近く行われる入札にはグリーやDeNA(ディー・エヌ・エー)といった競合他社などが参加する見通しだ」
と、笠原氏が株を手放したい意向を持っていることを指摘していた。
「KDDIからiPhone発売」は大筋正解だったが
この記事を掲載した日経BPのウェブサイトは、過去にもIT関連の大きな「独自ネタ」を放っている。ひとつが、11年9月22日に報じたKDDIからのアイフォーン(iPhone)発売だ。記事では、
「関係者によると、KDDIは米アップルと既に『iPhone5』の国内での販売契約を締結し、全国のauショップなどで11月頃から販売を開始する方向で関係各方面との準備に入っている。iPhone5は10月中旬頃、全世界で発売が開始される見通しだ」
とある。KDDIは、10月7日にiPhone4Sを10月14日発売することを発表しており、「iPhone4」の次の世代の機種名が違ったことを除けば、大筋で記事の内容は合っていると言えそうだ。
11年12月1日には、「ドコモ、来年夏にiPhone参入」と題した記事を配信。記事では、ドコモが12年夏に高速通信規格「LTE」に対応したiPadを、秋までにLTE対応のiPhoneを日本市場に投入する見通しだと報じている。だが、ドコモの加藤薫・次期社長は12年5月11日の記者会見で「現段階では難しい」と発言。iPhoneにドコモ独自のサービスを盛り込むことが難しいことが背景にあるとみられる。
このままの状況が続くと、日経ビジネスの独自ネタは「1勝1敗」になる可能性が高い。
ミクシィは「報じられている事実はございません」とコメント
今回のミクシィの身売り話をめぐっても、反応はさまざまだ。ミクシィは、記事が掲載された直後の深夜の段階で
「本日、一部報道機関において、『ミクシィ、身売りを検討』という報道がありましたが、報じられている事実はございません」
とする否定コメントを発表。朝になって、ミクシィの社外取締役を務める中村伊知哉・慶應義塾大学教授も、ツイッターで
「ウソです。虚構新聞ならわかるけど」
「ないものをないと立証するのは難しいね」
と強く否定した。
一方で、フェイスブック上では、身売りを前提としたとも読める関係者の書き込みもある。ある利用者が
「今認めたらおもしろすぐる。mixiさんのせいで、予定がずれたやないかい」
と書き込んだところ、ミクシィの広報担当者とみられる人物が、コメント欄で
「予定がずれてすみません」
と反応。この書き込みを、「身売りの話は本当だが、報道で、その予定時期がずれこんだ」と受け止める向きもあるようだ。また、「身売り」記事を書いた記者を名乗る利用者も、
「すみません」
と反応した。狭いIT関連業界なだけに、利用者同士が元々知り合いの可能性も高く、「馴れ合い」との指摘も出そうだ。
もっとも、最初の「予定がずれたやないかい」という書き込みは、「報道を見ていたら時間が過ぎてしまい、自分の予定がずれた」とも読める。
一連のやり取りを見ていたアルファブロガーの山本一郎さんが
「これはキャプってブログやメルマガに載せねばなるまい」
と書き込んだ上で、やり取りをキャプチャ画像とともにブログで公開。波紋が広がっている。
なお、ミクシィ株の5月15日の終値は前日比1万6400円(10.4%)高の17万4500円だった。