エコカー補助金の導入効果で販売好調が続く新車市場。その一方で新車販売の増加で零細・小規模な自動車整備業の苦境が続いている。
民間調査機関の帝国データバンク(TDB)が集計した2011年度(11年4月~12年3月)の自動車関連業種の倒産件数は、自動車整備業(自動車板金塗装業を含む)が前年度比約42%増、自動車部品・用品卸売業(自動車卸売業を含む)が同約43%増と大幅に増加した。
自動車整備業の倒産件数41.8%増
この点についてTDBは、前回のエコカー補助金で行われた新車買い換えへの優遇策、スクラップインセンティブの影響とみている。これにより古い車の廃車が急激に進み、部品や装置の劣化により必要となる追加整備の需要が減少したことなどが大きな要因となった。
TDBのまとめによると自動車関連業種の11年度倒産状況は、自動車・自動車部品製造業が倒産件数39県(前年度比9.3%減)で負債総額84億9700万円(同24.1%減)、自動車小売業は倒産件数142県(同15.0%減)で負債総額137億8700万円(同18.4%減)、自動車整備業が倒産件数78件(同41.8%増)で負債総額33億7500万円(同25.7%減)、自動車部品・用品卸売業が倒産件数60件(同42.9%増)で負債総額101億7600万円(同43.3%減)となった。
自動車関連業種の中で製造業である自動車部品メーカーと新車・中古車販売店などの倒産は減少したが、整備業と部品・用品卸売業の倒産件数は増加した。とくに整備業と部品・用品卸売業は負債総額が大きく減っていることから、TDBでは零細・小規模な事業者の倒産が増えたとしている。
この整備業と部品・用品卸売業の倒産の原因の一つに上げた前回のエコカー補助金は、08年に起きたリーマンショック後の景気の落ち込みに対応した経済対策として、政府が09年4月~10年9月に新車販売されたエコカーを対象に実施し、この中にスクラップインセンティブを採用した。ユーザーが新車を購入する際、新車登録・届出から13年超の乗用車を廃車にして乗り替える場合と、廃車が伴わない場合とでは補助額が大きく異なる仕組みを取り入れたわけだ。
中古車や整備、部品・用品などアフターマーケットが縮小
スクラップインセンティブの効果で前回のエコカー補助金の期間中は、新車登録・届出から13年超の車の月間廃車台数が、エコカー補助金開始前の3年間の平均値に比べて約34~58%と大幅に増加した。この結果、古い車から環境性能が優れた車に乗り替えるユーザーが短期間の間に急増したが、その反面、中古車や整備、部品・用品など新車販売後のアフターマーケットを縮小させることになった。
自動車ユーザーの多くは車が新しいうちは車を購入した新車ディーラーなどに車検や点検などの整備を頼む。だが新車購入から5年、10年が経過して車が古くなると整備料金が低い零細・小規模な整備業に整備を依頼する割合が増える。
今回のエコカー補助金にはスクラップインセンティブが採用されなかったが、前回のエコカー補助金で採用したスクラップインセンティブは、未だに整備業や部品・用品卸売業の経営を苦しめている。加えて前回と今回のエコカー補助金による新車販売の増加は、整備市場の中で大きなウェートを占める車検の需要の波を変化させている。TDBは体力の弱い零細・小規模な整備業などが経営難に陥る状況は今後も続くと指摘した。