消費税論議、「軽減税率」が焦点に 世論調査で「8割」が導入求める

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   2012年5月8日から始まった消費増税関連法案(2014年4月に8%、15年 10月に10%)の国会審議で、食料品など生活必需品の税率を低く抑える「軽減税率」が焦点の一つに浮上している。

   政府・民主党が自民党などの修正要求にどこまで応じるかが法案成立のカギで、増税で相対的に負担が重くなる低所得者向け対策の一環として、野党から軽減税率を求める声も強まっている。

首相は「修正要求」に柔軟姿勢

   「野党の提案にも真摯に向き合って議論したい」。野田佳彦首相は4月23日のTV番組で、修正要求に柔軟に対応する姿勢を示したが、念頭にあるのは軽減税率とされる。

   消費税は収入が多い人も少ない人も同じ税率が課されるため、低所得者ほど負担感が重い「逆進性」がある。このため、いち早く付加価値税(VAT=日本の消費税)を導入した欧州などでは、軽減税率を採用する国が多く、欧州連合(EU)27カ国平均でVATの標準税率は20.9%だが、食料品に限ると平均11.2%にとどまる。

   低所得者対策には、政府・民主党が検討する給付措置もあるが、実施しているのはカナダなど一部にとどまり、世界では軽減税率が主流。自民党内には「給付=バラマキ」との批判が根強く、塩谷立総務会長は、首相発言に「そういうこと(軽減税率)も含めて議論すべきだ」と反応、公明党の石井政調会長も「(給付措置と軽減税率の)どちらもあり得る」と述べている。

   世論調査でも、消費増税法案に「反対」が50~60%と逆風が強い中、税率引き上げる際には軽減税率を導入すべきだとする回答が8割前後に達している(毎日、産経新聞など)。

キャビアとフォアグラで格差

   欧州などの実情はどうか。昨年1月にVAT標準税率を17. 5%から20%に引き上げた英国は、食料品や新聞、医薬品などは0%、家庭で使う燃料や電力は5%など、幅広い軽減税率があり、増税に対する国民の不満を和らげる役割を果たしている。標準税率19%のドイツも食料品や水道の、宿泊施設の利用などが7%。スウェーデンはスポーツや映画の観賞にも軽減税率を認めている。

   ただ、軽減税率の対象商品の範囲の線引きは難題だ。フランスでは、マーガリンは標準税率の19.6%なのに対しバターは5.5%、キャビア19.6%に対しフォアグラやトリュフは5.5%と、酪農家など国内産業の保護措置を取っている。

   ドイツのように、同じハンバーガーでも、持ち帰れば軽減税率、店内で食べれば標準税率といった分かりにくさもつきまとう。

   医療手術は非課税だった韓国で昨年夏から、整形手術だけは課税されるようになったが、整形が一般的なお国柄とあって、国会でも「美容目的の整形手術にだけ課税するのは庶民に大きな負担」「男性の性器拡大手術は非課税なのに、女性の豊胸手術は課税される」と大論争に発展し、今も不満がくすぶるとか。

制度が複雑になり、税収が減る懸念

   このような問題を抱える軽減税率だけに、「制度が複雑になり、事業者の負担が大きくなる」(五十嵐文彦副財務相の7日の記者会見)との懸念は強い。また、法人税の各種優遇措置(租税特別措置)のように業界ごとの「利権の温床になる」(民主党税調幹部)とも指摘される。

   加えて、税収が大きく落ち込む心配もある。食品や新聞・出版物、医薬品への税率をゼロにしている英国の場合、軽減措置で付加価値税の税収が本来の6割強にとどまっているといわれるから、軽減税率をなくせば20%の税率は一律12%で済む計算だ。

   日本の財務省の試算では、消費税率を5%から10%に引き上げると13.5兆円の税収増が見込まれるが、課税品目の4分の1程度を占める食料品を5%のまま据え置くと、税収増は年間10.1兆円にとどまり、13.5兆円の増収を確保するには、標準税率を11.67%にする必要があるという。

   軽減税率は消費税導入時、1997年の引き上げ時にも議論になったが、低所得者対策は一定の給付措置などで済ませ、一律の税率でここまできた。ただ、その当時の大蔵省内にさえ、「標準税率が10%からさらに高くなる段階では軽減税率導入もありえる」との声があった。

   10%で軽減税率を導入するのか、さらに次の引き上げまで待つのか。消費税のあり方に大きく影響するテーマだが、与党内にも小沢グループなど増税反対・慎重派を抱え、与野党入り乱れた政争の様相が強まる中、冷静な制度論議をどこまで深められるのだろうか。

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