安全保障や環境破壊が課題
日本も遅ればせながら資源獲得競争に参戦した。グリーンランド北東部沖の海底油田(水深100~500メートル)の開発に向け、独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(旧石油開発公団)、国際石油開発帝石、出光興産、住友商事などが出資し設立した「グリーンランド石油開発」が入札(今年12月に1次入札締め切り)に参加する。落札できれば対象の鉱区(3万平方キロ)の76%の権益を得て、10年後の生産を目指す計画で、「日の丸」石油の確保が期待される。
こうした動きと連動して、安全保障面の懸念材料も出てきている。ロシアのほか、カナダ、ノルウェーを含め「沿岸各国が自国権益確保のため、このエリアの軍備増強に動き始めている」(外交筋)。航行しやすくなれば、例えばロシアのバルト海からバルチック艦隊が北極海経由で太平洋に出てくるといったことも想定されるなど、今後、緊張が高まっていく恐れもある。
もう一つが環境破壊だ。文字通り手つかずの自然が開発や船舶航行で荒らされれば、この海域にとどまらず、地球全体の生態系にまで大きな影響を及ぼしかねない。「経済的なメリットばかりに目を奪われていると、しっぺ返しを受けるかもしれない」と懸念する専門家は多い。