リーマンショックに端を発した「出版不況」が続く中、雑誌の中でも明暗が分かれてきた。新聞や雑誌の発行部数を調べている日本ABC協会が2012年4月下旬に発表した11年下期(11年7~12月)の「雑誌レポート」(発行社レポート)によると、ビジネス紙やファッション誌の大半が「右肩下がり」なのに対して、首都圏で月曜日発売の「週刊現代」「週刊ポスト」が、急激に部数を回復させている。その背景はどこにあるのか。
原発報道のスタンスでは部数の明暗分かれなかった
東日本大震災では、製紙工場やインクの工場が被災して印刷に支障が出たこともあって、震災直前の10年下期と直後の11年上期を比べると、部数を減らした雑誌が大半。さらに震災後の11年下期データと比べると、雑誌の種類によって、復調ぶりが大きく分かれたことが分かる。
首都圏で月~火曜日に発売される総合週刊誌を見ただけでも、大きな差が出ている。
10年下期と11年上期との比較で10%近い伸びを見せたのが、「週刊ポスト」(33万3830部、7.6%)と「週刊現代」(43万3423部、8.1%増)。対照的なのが「AERA」(8万6293部、8.0%減)、「サンデー毎日」(6万6605部、2.5%減)「週刊朝日」(13万4934部、10.7%減)。震災前と比べても部数を落としている。
週刊誌の震災報道をめぐっては、「現代」が放射線の危険性を強調する一方、「ポスト」がこの報道姿勢を名指しで批判するなど、立場が大きく分かれた。「AERA」も、危険性を強調した報道が多かったと受け止められているようだ。今回明らかになった数字を見る限りでは、震災関連の報道姿勢で部数に差がついたということではないようだ。突出しているのが「現代」「ポスト」の好調ぶりで、この背景には、出版関係者からは
「中高年向けの性に関する特集が効いたのではないか」
といった声もあがっている。90年代前半に「ヘアヌード」という言葉を生み出した「現代」は、
「特別付録『世界のスポーツ美女NUDE』」(9月17日号)
といった、袋とじのヌード写真を多用。他にも、
「セックスのたしなみを学ぶ 江戸の名器」(9月24日・10月1日号)
といった、趣の違った特集も掲載されている。一方の「ポスト」は、
「オーバー70歳世代の『私の童貞喪失』物語」(7月22日・29日号)
「オーバー70歳世代の『私の処女喪失』物語」(8月2日号)
「『60歳以上向けフーゾク』行列のできる店」(10月21日号)
と、明らかにネットには疎いようなシニア層を意識した構成で、8月19日号には、「春画の秘宝48手」と題した小冊子も付属している。
特に経済誌、ファッション誌が厳しい状況
なお、木曜日発売の雑誌は「週刊文春」(49万2844部、2.2%増)「週刊新潮」(38万9948部、0.5%減)と、ほぼ横ばいだ。いずれも主要な読者層は中高年とみられるが、「性特集」はやっていない。
それ以外の雑誌の分野としては、「週刊女性」「女性自身」「女性セブン」といった女性向け週刊誌は、11年上期に比べれば微増しているものの、10年下期の水準を割り込んでおり、苦戦が続いている。
ビジネス誌や女性向けファッション誌は、かろうじて微増した「Ray」や「mina」を除けば総じて「右肩下がり」。とくに経済誌では10%以上、ファッション誌では20%以上の落ち込みとなっているところが目立っており、厳しい状況となっている。