マスコミへの税務調査も税務調査は無言の圧力?
さらに、興味深いのは公開性だ。記者会見をユーチューブですべて公開し、「可視化」を行っている。実際の行政でも関係部署の議論は「可視化」して公開している。こうなると、議論の結果はおのずと見えてくる。もし、今回の件でも、ユーチューブがなく、同席した記者からの情報発信だけであれば、記者仲間の配慮から、ここまで記者の質問内容が酷いことは書かれないだろう。
橋下市長の「可視化」によって、MBS記者の不勉強ぶりが晒されてしまった。動画では、できれば、橋下市長の映像だけでなく、橋下市長の後ろ側からの映像もとって、誰が質問したかがわかるとなおいいだろう。
MBSでは番組を見て欲しいと商売気を出しているが、記者会見自体が可視化されて面白い情報になっており、それよりつまらない番組だと、既存メディアとしての評判を下げてしまう可能性もある。
いずれにしても、可視化は今後の社会で興味深いツールになる。今の新聞・テレビは消費税増税一色で面白くない。その背景として、国税の税務調査が新聞・テレビに入り、無言の圧力になっているという噂もある。その真偽は明らかでないが、税務調査は職場に調査官が来るわけなので、その一部始終を可視化するのは、自分たちの職場内での行為なので誰にも邪魔される筋合いでない。
メディアなのだから、ユーチューブに出さずに、自らの媒体で可視化して報道したらどうだろうか。きっと面白いことになるとともに、税務当局としても、いわれなき「圧力」への反論材料になるだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。