朝日新聞の若宮啓文主筆(64)の中国出張費に問題があったと週刊文春が報じ、朝日側が「不正はない」と抗議する事態になっている。
「朝日新聞主筆 女・カネ・中国の醜聞」。週刊文春が2012年5月9日発売号で、こんな仰々しい見出しの巻頭特集を組んだ。
中国出張費の問題などを大特集
記事では、朝日新聞社幹部の告白として、若宮啓文主筆が論説主幹だったときに出張費の問題があったとした。それによると、若宮氏が08年2月に北京や上海に3~4泊で出張した際、50歳前後の女性秘書を同行させ、会社の経費で航空機のビジネスクラスに乗せたり高級ホテルに宿泊させたりした。朝日には中国支局があることから秘書を連れて行く必要はなく、しかも内勤職は社内規定で海外出張が認められていなかったという。
記事では、朝日幹部に「社の内部監査室による調査で不正が発覚したのですが、彼はこれを認め、全額を会社に返済しました」と語らせている。その額は、秘書の航空運賃、宿泊費で計約50万円に上った。
また、若宮氏は、著書の出版記念パーティーを外務省の外郭団体のような中国の外交学会に開いてもらったとし、「独裁国家の政府機関に自らの言論活動をお祝いされるというのは本来ありえない」と他紙幹部の批判を紹介している。
文春は、若宮氏や女性秘書、朝日側にも取材しており、反論も書いている。
それによると、秘書を連れて行ったのは、著書中国版の出版交渉をしていたことや、社説を書くときにFAXのやり取りをしたり、パーティーで日本側の受付をしてもらったりするためもあったとした。
また、若宮氏や秘書は、2人に男女関係があったということを全否定している。
文春「記事内容に絶対の自信」
朝日側は、「社の経費を不正に使用した事実も、若宮がそれを認めた事実もありません」とコメントしたとした。
文春の記事では、若宮氏と朝日側などの主張が異なる点も書いている。
それによると、若宮氏は、秘書同行について副主幹にも相談したとしたが、副主幹の1人は、秘書がいなくなると若宮氏が言っただけだと文春に説明した。また、若宮氏は、出張費について経理を通っていたとしたが、文春が朝日側に取材したところ、経理責任者に説明し、承認を得るべきだったとコメントした。若宮氏は、出張が問題にされて支払ったと明かしたことに対し、朝日側は、若宮氏が自主的に返納したとコメントしている。
朝日側は2012年5月9日、文春の記事に対し、「事実無根の記述で本社主筆と本社の名誉、信用を著しく毀損する」として、謝罪と訂正記事の掲載を求める抗議書を前日に送ったことを紙面で明らかにした。そこでは、「記事の見出し部分や本文で『不正』との事実無根の記述を繰り返し、主筆があたかも不正行為をしたとの印象を読者に与えた」と言っている。
記事では、朝日の主張も併記しており、不正というのは文春側の論評にならないのか。この点について、朝日新聞社の広報部では、取材に対し、「記事中の『会社のカネを不正につかった』『不正が発覚した』との記述は、お尋ねのような『論評』ではなく、証拠等によって事実の有無を立証することが可能な『事実の摘示』にあたります」と説明した。
また、新聞の主筆が公的機関からパーティーを開いてもらったことについては、「政府機関といっても行政機関と異なり、各国の政治家や学者、有識者らとの交流・意見交換を深めることを目的とした外郭団体です」「若宮は現地で講演をしましたが、主催者から謝礼は一切受け取っていません」と言っている。
なお、週刊文春の編集部では、「記事内容については、絶対の自信を持っております」とだけコメントしている。