トヨタ自動車が中国をはじめとする現地生産に「前のめり」になっている。2012年4月に開かれた北京モーターショーでは「中国産」ハイブリッド(HV)車「ユンドンショワンチン」をお披露目したばかりだが、2015年をめどに基幹部品から一貫生産する。
一方、米国でも主力である「プリウス」の次期モデルの生産を15年前後にも開始したい考え。日本からの輸出比率の切り下げを進めることで「為替リスク」を抑える狙いがあるようだ。
HV車の一貫生産で「テコ入れ」
トヨタは、北京モーターショーでHV車の現地生産を表明した。中国の自動車市場でのトヨタのシェアは5%前後で、上位の独フォルクスワーゲンや米ゼネラル・モーターズなどに大きく引き離されている。
豊田章男社長が「中国で出遅れていると言われるたびに、悔しい思いをしてきた」と、現地メディアらに訴えるほどだが、いまや世界最大の市場となった中国での巻き返し策として投入するのも、「お家芸」のHV技術だった。
その「目玉」となったのが、江蘇省常熟市の「トヨタ自動車研究開発センター(TMEC)」で開発中のHVシステムを搭載するコンセプトカー「ユンドンショワンチン」だ。
現在、中国では「プリウス」などのHV車向け基幹部品は、日本から輸出しているので、販売価格は割高で、台数も限定される。そのため2015年にも一貫生産に踏み切る計画で、「ユンドンショワンチン」はその第1弾になる。中国にも「エコカーブーム」をもたらすことができるか、勝負どころだ。
その一方で、北米市場は主力のプリウスが2011年は約14万台と伸び悩んでいる。国内新車販売台数では約25万台を売り車種別ではトップを快走。北米市場も国内に次ぐ販売台数ではあるが、環境に関心の高い「エコ」なユーザーを取り込めているとはいえない。
さらに、足かせになっているのが「円高」だ。HV車はこれまで国内での生産が中心だった。それもあって、トヨタの輸出比率は同じ国産の日産自動車(16%)やホンダ(9%)と比べても群を抜く23%と高い。
「為替リスク」の抑制に懸命
トヨタにとって「円高」は難題。2012年3月下旬の記者懇談会で、豊田社長は「1ドル95~100円程度で推移してくれれば」と漏らした。やや解消したとはいえ、現在の「1ドル80円台」の水準はトヨタにとって、なお円高なのだ。
米格付け会社のムーディーズ・ジャパンは「トヨタ 為替リスクが引き続き課題」と題したレポートで、「円高によってトヨタの収益性が圧迫されている」とコメント。さらに、「トヨタは輸出比率が高いため、同社は海外市場での値上げやコスト削減に取り組んでいるものの円高の影響を相殺するには十分でない」と指摘している。
TIWの自動車アナリスト、高田悟氏は「80円台前半では厳しいところ。円安が期待できないなかで、現地生産、調達力の強化、部品の共通化などに勢いをつけて取り組んでいくこと。中期的にはそれが足もとの体制をしっかり整えることになると判断したのでしょう」と説明。とにかく、いまは輸出比率を引き下げ、為替リスクを抑えることに懸命なようだ。