伊勢神宮に関する事務を管理する神宮司庁(三重県伊勢市)は2012年5月7日、天皇陛下の長女、黒田清子(さやこ)さん(43)が4月26日付で、臨時神宮祭主に就任したと発表した。20年に一度の式年遷宮が2013年に控えており、「万全を期すため」という。
インターネット上では、「伊勢神宮に住み込むことになるの?」といった素朴な疑問の声も挙がっている。臨時祭主は、どんな役割を担うのだろうか。
2013年は、20年に一度の式年遷宮
神宮司庁広報室などによると、「伊勢神宮」は通称で、「単に『神宮』が正式な名称」だ。伊勢神宮は、皇室の「御祖神」である「天照大御神」(あまてらすおおみかみ)を祭る内宮(ないくう)と外宮(げくう)の総称で、別宮や末社などを含め、計125の宮社がある。全国の神社の「本宗」(ほんそう)と位置付けられている。
式年遷宮は、20年に一度、神宮の社殿を建て替えるなどする「わが国最大のお祭り」で、「(西暦)690年から1300年にわたって続けられている」という。
神宮祭主は、天皇陛下の代理として神宮の祭事をつかさどる役職で、天皇陛下の「勅旨」を受けて決まる「神宮だけ」の役職だという。
現在の祭主は、昭和天皇の4女の池田厚子さん(81)で、1988年に就任した。戦後の祭主には、皇族出身の女性が就いている。過去には、男性がなったり、華族らがなったりしていた。
14世紀ごろまで続いていた、未婚の内親王らが務めた「斎内親王」(斎宮)とは、「イメージが重なる部分もあるようだが、全く別もの」だ。祭主のはじまりははっきりしないが、平安時代まではさかのぼるとされる。
神宮では現在、年間「千数百回」ものお祭りが行われている。祭主が直接、神事に携わる(ご奉仕する)のは、このうち神嘗祭(10月)など一部に限られている。このほかに、出席するだけの「ご参列」もある。
「住み込みの必要」なし
2013年の式年遷宮に向けては、すでに05年から関係する祭りが始まっており、12年も今後、5月と7月に予定されている。13年には16の祭りや行事がある。祭主自らが「ご奉仕」するのは、「遷御」(10月)など主な祭りだけだ。
祭場は非公開で、神職らが祭場に向かうまでの「参進風景」は見学可能、という例が少なくない。詳細は未定だが、前回の式年遷宮の例では、一般の人と一緒に祭主が参加する行事もある。
臨時祭主に就任した黒田清子さんは今後、祭主の池田さんと祭りの担当を「分担」する形になるのだろうか。神宮司庁広報室によると、「具体的には決まっていない。式年遷宮を控え、万全を期すためにお願いしている」とのことだった。
また、祭主や臨時祭主は、神宮内もしくは周辺に「住み込む」必要があるのだろうか。ネットの2ちゃんねるには、そうした疑問が書き込まれていた。
祭主の池田さんは三重県外に住んでおり、必要があるときに神宮を訪れるという。祭主が直接関わる祭りは限られているためだ。黒田清子さんも、同様の対応となりそうだ。
黒田清子さんは、「紀宮(のりのみや)さま」として知られていた天皇家の長女で、2005年に東京都職員の黒田慶樹さんと結婚して皇籍を離れた。最近では、2012年4月の天皇、皇后両陛下のご結婚53年の記念日に、黒田清子さん夫妻も、皇太子、秋篠宮両ご夫妻と一緒に両陛下と夕食をともにしてお祝いしたことなどが報じられている。