原油高を背景に、燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)が上昇している。北米路線では往復で約5万円にのぼり、航空券そのものの値段よりも高くなってしまうケースもある。だが、サーチャージの基準となるジェット燃料市況を見ると、一時期に比べて値下がり傾向で、サーチャージも今後下がる可能性がある。値上がりする前に買うか、さらにしばらく待ってから買うか、微妙な選択を迫られることになりそうだ。
長距離路線では「サーチャージ>航空券」になることも
日本航空(JAL)と全日空(ANA)は2012年4月中旬、6月~7月に発券する国際線の航空券について、サーチャージを引き上げることを発表した。引き上げ幅は両社とも同じで、北米やヨーロッパ路線が往復4万7000円から5万2000円に、マレーシアやシンガポール路線が2万3000円から2万6000円に引き上げられる。
一方、航空各社が出す正規割引運賃でも、かなり「お買い得」なものが出てきている。例えば、出発50日前までに購入することが条件の北米西海岸向け運賃「JAL/AA USセイバー50」(JAL)や「アメリカ・カナダ エコ割50」(ANA)では、大型連休を除いた4月~7月中旬出発で最も安い運賃は往復4万4000円。長距離路線に限って言えば、サーチャージが航空券そのものの値段を上回るケースが、すでに出てきていることになる。6月以降に発券された分については、さらに割高感が増すことになる。
日本発の国際線需要は、震災の反動で、大型連休から夏休みにかけて大きく回復するとみられている。このことから、需要が冷え込むことを嫌った各社が「サーチャージが高止まりしている分、航空券の価格自体を抑えている」という側面もある。
ここで例に挙げた条件の割引運賃の場合、サーチャージが値上がりする直前の5月末に発券したとして、実際に旅行が始められるのは7月下旬以降。夏休み期間を直撃する形で、今から夏休みの航空券の手配を検討しても、決して遅くはないとの見方もできそうだ。
燃油価格は4月以降値下がり傾向
航空機には、ケロシンと呼ばれる燃料が使用されており、サーチャージは、「シンガポールケロシン市況価格」をもとに決められる。今回値上げの対象となった6~7月の発券分は、2~3月の市況価格が1バレルあたり134.29ドル。130ドルよりも高くなったことから、サーチャージの引き上げが決まった。ケロシン市況は、4月初めは137ドル程度とかなり高い水準だったが、それ以降値下がりが続いており、5月4日以降は130ドルを割り込んでいる。このまま値下がり傾向が続いて4~5月の平均が130ドルを下回れば、サーチャージも元の水準に戻ることになる。4~5月の市況価格が反映されるのは8~9月発券分のサーチャージ。仮にサーチャージが値下がりした場合、9月下旬以降に恩恵を受けられる可能性もある。