「海上自衛隊、この情報公開はヤバい。非常にヤバい」――そんなつぶやきがネット上を駆け巡っている。まさか重要機密の漏洩では、とリンクをたどると、そこには「海上自衛隊のカレーレシピ」があった。
ただのカレーと侮ってはいけない。掲載されたレシピの数は実に42、いずれもが各艦艇や部隊が代々工夫を凝らしながら作り上げてきたものだ。その充実ぶりにネット上では、「めちゃくちゃうまそう」「これ最高機密でしょ」と感嘆の声が上がっている。
「しらせ」はシーフード、潜水艦は激辛…
たとえば南極観測でおなじみの砕氷船「しらせ」からは、エビやアサリ、イカを使った「しらせシーフードカレー」が紹介されている。レシピを見ると、サフランを使ったご飯の炊き方に始まり、具材の下ごしらえ、「インスタントコーヒー・ガラムマサラ・牛乳・ウスターソース・醤油・ケチャップ」といった「隠し味」まで丁寧に解説している。「シーフードは、あまり熱を通しすぎないこと、玉ねぎはよく炒めて香り・甘味・コクを出す」といったアドバイスもあり、生半可なレシピサイト顔負けの内容だ。
このほか「くらま」「うみぎり」などの護衛艦や掃海艇、また各地の航空基地隊や東京音楽隊など各部門のバラエティ豊かなレシピが掲載されている。岩国航空基地隊の「れんこんカレー」、鶏骨でだしを作る那覇航空基地隊の「愛情たっぷりカレー」、さらには潜水艦「はやしお」自慢の「激辛カレー」などユニークなものも少なくない。
しかし海上自衛隊でなぜ「カレー」なのか。そもそもの始まりは旧帝国海軍時代、兵士の脚気予防のため海軍が英国風のカレーシチューを取り入れたことだという。それをご飯にかけるなどして日本風にアレンジしたのがいわゆる「海軍カレー」で、以来海軍の定番メニューとして根付き、また一般にカレーライスが普及するきっかけともなった。
海上自衛隊「おいしいカレーは部隊の誇り」
海上自衛隊にもその伝統は受け継がれ、現在でも毎週金曜日にはすべての部署が「カレーの日」としてカレーを食べることになっている。艦上生活で失われがちな曜日感覚を確保するための旧海軍時代から続く習慣だ。海自カレーはイベントでも目玉メニューとして振る舞われるなど、すっかり海自の看板食品となっている。
海上自衛隊によれば、レシピは2008年から「評判のカレーをより多くの人に楽しんでほしい」と公開しているものだという。部隊ごとのレシピの違いについては、
「おいしいカレーは部隊の誇りです。ですから他にはないものを作ろうと土地の食材を生かしたり秘伝の隠し味を研究したりするなど、部隊同士が競い合うような形になって、さまざまな特色あるカレーが生まれたのだと思います」
と話す。
「これほどおいしいレシピはまさに『機密』なのでは?」と水を向けると苦笑しながらも、「それだけおいしい、ということでしょう」。その口ぶりには、海上自衛隊のカレーへの誇りが感じられた。