「民間の娘が皇室でやっていけるものなのか」
――8月31日に母冨美さんと1時間話したときに、そうしたことを聞き出したのですか。
佐伯 「小泉さんによる申し込み」の話は教えてくれなかった。ただ、「噂を含めて」ということで美智子さんがお妃選びの渦中にいることは間違いないと認め、外遊の意味が「娘がもみくちゃにされる」ことを避ける意味がある、という話はしていた。
冨美さんは、宮内庁の本気度というか、お妃選びの情勢を知りたがっていた。こっちは当時、暗中模索の取材で、実は外形的な選考首脳の会合はキャッチしていたが、その中身はさっぱり分からないという段階だったのだけど、もっともらしい解説をしながら話をしていた。
この8月末の時点では、まだギブ・アンド・テークではなく、冨美さんの質問にほぼ一方的にこちらがギブする、という感じだった。冨美さんとの距離がぐっと近くなったと感じたのは、次に冨美さんと正田邸で会う9月18日のことだ。数日前に約束をもらった。
――何があったのですか。
佐伯 9月18日の午後1時ごろかな、正田邸へ行って冨美さんと話し始めて30分もしないうちに電話が入ってきて客が来ることになった、という。ぼくは「それでは失礼します」と帰ろうとすると、冨美さんは「いいの、いいの。ほどなく終わるから待っていて」と引き留めた。長い廊下伝いに応接室の奧の方の6畳和室にお手伝いさんに案内された。どうも冨美さんの様子が変だったのが気になった。
1時間ほど待たされた後、お手伝いさんが呼びにきて応接室に戻ると、冨美さんの様子が一層変わっていて、「民間の娘が皇室に入ってやっていけるものなのだろうか」と、そのものズバリでぼくに相談してきた。「おおっと、これはいよいよ選考首脳側から働きかけがあったな」と分かる反応だ。冨美さんは具体的な説明はしないのだけど、認めたようなものだ。