華奢という感じではなく、「健康美」という印象
――そのときは美智子さまとはお会いできなかったのですか。初めて美智子さまと話ができたのはいつですか。
佐伯 ずっと後になって8月31日、五反田の自宅で、だね。正田家が恒例通りしばらく軽井沢へ行っていたうちの8月13日に正田家別荘にぼくが「遊びに」行き、そこで冨美さんから「東京に帰ったら美智子と会う機会をつくりましょう」と言ってもらっていた。
当時、皇太子さまも夏に軽井沢に滞在していた。それで先輩たちと交代で「軽井沢警戒」として出張していて、ぼくも2週間ほど軽井沢に泊まり込んでいた。
その夏、軽井沢でテニスをする皇太子さまの周囲でテニスをする若い女性たちには、各マスコミから注目が集まっており、美智子さまもそのうちの1人だった。特別に2人が親しそう、という雰囲気はまったくなくて、周りにいる多くの女性の1人という感じだった。そういう意味で何度も美智子さんを目にはしていたが、現地で声をかけるという雰囲気ではなかったな。
――8月31日の美智子さま初取材のときの印象はどうでしたか。
佐伯 当時の取材ノートには「○(まる)正 会見」としか書いていないが、よく覚えている。1番印象的だったのは、「こんなきれいな目をしていたのか」ということだった。「富士額(ふじびたい)」、富士山のような額も目についたし、華奢という感じではなく、「健康美」という印象だった。夏に屋外でテニスをしていた割には日焼けしてなくて、お化粧もほとんどしていなかった。いわゆる「白粉(おしろい)」は日頃も使っていないと後で分かった。
ソファに座るぼくの正面に美智子さんが1人用のいすに座り、美智子さんの左手少し後ろの方に冨美さんが座った。ぼくと美智子さんの間にテーブルはなかったな。美智子さんのそろえた両足がはっきり見えた記憶がある。