(ゆいっこ花巻;増子義久)
「あの日のことは消すことができない映像として瞼(まぶた)に焼き付いている。思い出すのも辛いが、聞いてくれる人があればきちんと伝えなければ…。1年たってやっと、そんな気持ちになることができました」―。21日、花巻市内で避難生活を送っている被災者たちがアジアからの留学生などを前に東日本大震災の体験談を話した。
多文化共生をモットーに掲げ、日本語学習などの支援を続けている認定NPO法人「アジアの新しい風」(上高子事務 局長)の一行30人で、うち中国とベトナムからの留学生が7人。釜石、大船渡、気仙沼の各市や大槌、山田両町などから花巻市の「みなし仮設」に避難している10人が数人ずつのグループごとに「あの日」の生々しい光景を再現した。同法人の会員で福島県いわき市在住の西山武さん(68)も急きょ、原発事故の惨状を伝える側に。
同法人の被災地訪問は昨年6月に続いて2回目。今年春、一橋大学に入学したベトナム出身のブイ・ティ・トゥイ・ハンさ ん(20)は今回も参加。西山さんから放射能汚染の深刻さを聞き、絶句した。「ふるさとを失うということ。その悲しみの深さが…」。中国出身で東京大学修士課程1年の宗天鴻(しゅうてんこう)さん(22)は初めて被災者の話を聞いた。「被害の大きさにただ、圧倒されてしまった。皆さん、これからどうやって生きていけばよいのか」と宗さん。
気仙沼出身の日出忠英さん(70)は現在、石巻市の被災地で「鎮魂の桜の森づくり」に携わっている。 元々、造園が本業。「ぜひ、被災者の方に設計を頼みたい」とプロジェクト側から白羽の矢が立った。「1カ月ほど前にやっと20本のエゾ山桜を植えることができました。その途端、滅入っていた気持ちがしゃきっとなって…。これであの日の記憶を後世に伝えることができるんだ、と。自分自身も"語り部"となって、あの地獄のような体験を語り続けたい」と日出さん。
留学生たちが口をそろえた。「若い自分たちの役割は今日聞いた話を今度は世界中に発信すること。世界中に語りのネットワークをつくること。そのことの大切さを被災者のみなさんから学びました」。一行は22日、大槌町の仮設住宅を訪れ、"語り部たち"との再会を果たすことにしている。
ゆいっこ
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