政治サイドから日本銀行に対する追加金融緩和への圧力がかつてなく強まっている。2012年4月10日の金融政策決定会合で追加緩和を見送ったことで、一段と拍車がかかっている。2月に実質インフレ目標を導入し、3月には成長支援融資枠を拡大と、矢継ぎ早に緩和策を打ってきた反動もあるが、「政策遂行がままならない政府・与党の焦りの表れ」との指摘も出ている。
政策金利(無担保コール翌日物)を「0~0.1%程度」とする実質ゼロ金利を導入している日銀は、2月14日の決定会合で、国債買い入れなどを行う「基金」を55兆円から65兆円に増額するとともに、望ましい物価水準として「上昇率1%を目指す」と具体的に示し、その状況が見通せるまで実質ゼロ金利を継続する方針を示した。
緩和カード温存で円高に振れる
日銀はそれまで物価安定の目安を「消費者物価指数が前年比2%以下のプラスで、中心は1%程度」と説明してきたが、米連邦準備制度理事会(FRB)が物価目標を2%と明示した直後に円高が進んだことから、政府内外から批判が噴き出し、「日銀は外堀も内堀も埋められた状況」(エコノミスト)の中で追い込まれた。そして3月13日の決定会合でも、日本経済の成長を支援する貸出制度を拡充し、日本経済の成長力強化とデフレ脱却に取り組む姿勢をアピールした。
ところが4月10日の決定会合では、政策を追加せず、緩和カードを温存した。市場は早速反応した。2011年夏ごろから1ドル=70円台後半の高止まりが続いた円ドル相場は日銀の緩和強化で3月半ばには84円19銭まで円安に振れたが、4月10日は一時、1ドル=80円92銭と、約1カ月ぶりの円高水準に戻ってしまった。