「2ちゃんねる」に貼られたリンクで名誉を傷つけられたとして、東京都内の男性がプロバイダー(インターネット接続事業者)に対して、リンクを張った人の発信者情報の開示を求めた訴訟の控訴審判決が2012年4月18日に東京高裁(春日通良裁判長)であった。
11年12月の1審の東京地裁判決(植垣勝裕裁判長)では、掲示板にURLを書き込んだだけでは名誉毀損に当たらないとしていたが、高裁判決ではこれを破棄。プロバイダー側に発信者情報(氏名または名称、住所、メールアドレス)の開示を命じた。
リンク先にセクハラの内容書いた虚偽の書き込み
問題とされた書き込みは、11年1月初頭、ある団体関係のスレッドに書き込まれた。スレッドの話題とは関係なく、「●●(実際の書き込みは職業と実名)のセクハラ」と題した2ちゃんねる内の別スレッドのタイトルと、そのスレッドへのURLが書き込まれた。リンク先には、原告男性が学生時代に女性に対してセクハラをしたとする内容が書き込まれた。なお、このセクハラの内容については、高裁判決では「セクハラをしたと認める証拠はない」としている。
原告男性は、スレッドのタイトルとリンク先のURLを書き込むだけでも名誉毀損に当たると主張したが、プロバイダー側は(1)スレッドのタイトルとURLを書き込んだ人は、そのスレッドの存在を示すために書き込みをしたに過ぎない(2)書き込みには、原告男性がセクハラを行ったとの事実は示されていない(3)従って、書き込みで原告男性の社会的評価が低下するものではないので、名誉毀損には当たらない、などと反論していた。
人物が特定され次第、さらに法的措置を行う方針
高裁判決では、
「ハイパーリンクが設定表示されている本件各記事(編注: スレッドのタイトルとURL)を見る者がハイパーリンク先の記事を見る可能性があることは容易に想像できる」
「本件各記事を書き込んだ者は、意図的に本件記事3(編注:リンク先の、具体的なセクハラの内容が書かれている書き込み)に移行できるようにハイパーリンクを設定表示しているのであるから、本件記事3を本件各記事に取り込んでいると認めることができる」
と、スレッドのタイトルとURLを書き込むことは、リンク先の具体的なセクハラの内容を書き込むのと同様の意味を持つとの見方を示した。その結果、判決では、
「セクハラを行ったかのような内容の事実を摘示したものであり、控訴人(編注: 原告男性)の社会的評価を低下させるものと認められる」
と、名誉毀損が成立するとしている。
原告男性側は、書き込みをした人が特定され次第、さらに法的措置を行う見通しだ。