「年長勝利」投手は左投手ばかり
日本球界にも高齢タフガイがいる。中日の山本昌で、モイヤーより2日早い15日の阪神戦、勝利投手になり、46歳8か月のセ・リーグ最年長先発勝利の記録をつくった。8回を2安打、無失点。こちらは130kmがやっとのストレートとスクリューボールでかわしきった。
山本は昨シーズン、右足首のけがでお休み。だから「まさか今シーズンも契約してくれるとは・・・」。それどころか高木守道新監督から「開幕戦に投げるか」と言われ、話題になった。モイヤーとよく似ている。
これまでのセ記録は昨年限りで引退した工藤公康。横浜時代の2009年、46歳1か月で勝利投手になっている。名球会のメンバーで、今年から解説者として活躍中だ。プロ野球記録は浜崎真二の48歳4か月。浜崎は小柄で、慶大のエースとして知られた。国鉄(現ヤクルト)や阪急(現オリックス)などで監督を務め、引退後は毒舌評論家、ご意見番として知られ「球界彦左」との異名を取った。
この年長記録者たちには共通点がある。いずれも「左腕」なのだ。「左は貴重」と大事にされるが、ここまで長寿だと左投手はますます重用されるだろう。
今年、日本球界では「フォーティーズ」が元気バリバリである。開幕時の年齢で最年長はくだんの山本昌。続いて44歳の下柳剛(楽天)と打者の金本知憲(阪神)、山崎武司(中日)の3人。下柳は阪神を自由契約になり、トライアウトを受けて戻ってきた。
43歳に捕手の中嶋聡(日本ハム)。42歳は捕手の谷繁元信(中日)、宮本慎也(ヤクルト)。40歳では和田一浩(中日)、稲葉篤紀(日本ハム)、北川博敏(オリックス)らが並ぶ。宮本、稲葉は通算2000安打を目指しているし、北川はチームがピンチになると先発出場するなど、いずれもしたたかな選手ばかり。
ベテランが活躍する大きな理由の一つに、実力選手が大リーグでプレーを望むことにある。その空いた穴を埋めるのに、若手では物足りなさがあるから経験豊富な高齢選手に頼る、というわけだ。だから日本の「フォーティーズ」「マスターズ世代」の活躍は、必ずしも拍手喝采できない一面もある。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)