6年前に開校した公立大学に、全国から熱い注目が集まっている。英語を中心とした異色のカリキュラムときめ細かい就職指導で、就職率はほぼ100%。志願者数も増加を続け、受験偏差値も、今や旧7帝国大に肩を並べるほどなのだ。
「『英語を学ぶ大学』ではなく『英語で学ぶ大学』」
国際教養大学(秋田県秋田市、AIU)は2004年に開学。ウェブサイトには「『英語を学ぶ大学』ではなく『英語で学ぶ大学』です」とうたっており、すべての授業が英語で行われているほか、1年間の留学が義務づけられている。9月入学を早く取り入れていることが特徴だ。全国的に注目を浴びたのが、その就職率の高さだ。AIUでは08年に初めての卒業生を出したが、就職率は100%を達成。12年度(11年8月卒業と12年3月卒業)は、161人の就職希望者に対して160人が就職。就職率は99.4%と、高い水準を保っている。
「大学の思い出は就活です(苦笑): 大学生活50のお約束」 (ちくま新書)などの著書がある大学ジャーナリストの石渡嶺司さんによると、
「ある程度『できる』学生が入ってくる上に、みんなよく勉強する」
のだという。初めての卒業生の就職実績が話題になり、企業の「AIU詣で」もあるという。
「地場だけではなく、在京・在阪の名だたる企業が学校まで出向いて会社説明会を開催しています。これが企業側の採用意欲の表れで、学生にとっては、就職活動に対するハードルが下がるはずです」
11年度まで出願者数は右肩上がり
その結果、入学の難易度も上昇している。代々木ゼミナールの12年度の大学難易度一覧では、国際教養大の2次試験の偏差値は66。参考までに旧帝大の前期日程の偏差値を見ると、東大文Iが71、京大法学部が69、東北大法学部64、大阪大学法学部66、九州大法学部62といった具合だ。
出願者数も伸びている。4月入学者向け入試について言えば、130~150人程度の募集に対して、09年度は1186人、10年度は1506人、11年度は2632人と右肩上がり。12年度は2238人と約15%落ち込んでいるが、大学側は、
「11年度が非常に多かったので、その反動なのではないか。それでも、10年度に比べれば1.5倍に増えている」
と、高水準で推移していることに自信を見せている。
いわば、「良い就職実績が出る→志願者数が増える→学生の質が上がる→就職実績が上がる」という良いサイクルが繰り返されている形で、石渡さんも「偏差値も『高止まり』するのでは」と見ている。
なお、12年度の出願者2238人のうち、秋田県内出身者は5%未満の108人。全国区の大学だということを裏付ける一方、秋田県の公費が投入されている公立大学としては「痛し痒し」といったところだ。