国土交通省が首都圏で災害が起こった際に、機能の停止を防ぐ「首都機能のバックアップ」構想をスタートさせた。
栃木県那須塩原市がさっそく移転候補地として名乗りをあげ、他の自治体も乗り遅れないよう検討を始めた。ただ、こうした動きに国土交通省は「そもそも地方に機能を移転する計画ではない」と頭を抱えている。
西那須野塩原インターチェンジ近くに立地?
国会や政府機能の移転を促す国土交通省の首都機能移転企画課は2011年7月に廃止されている。一方、同年6月には「東京圏の中枢機能のバックアップに関する検討会」が始まり、2012年4月5日には二次取りまとめが発表された。ここではバックアップすべき業務や、バックアップ場所の要件として「災害の蓋然性が低いこと」などが書き込まれた。
朝日新聞の12年4月20日付けの地方版によると、那須塩原市の阿久津憲二市長が19日の記者会見で、
「大震災を受けて国が検討している首都機能のバックアップについて、移転候補地として名乗りをあげた」
と述べ、西那須野塩原インターチェンジ近くに国公有地があるため立地は可能、などとしている。
「首都機能移転」構想の現状は休眠状態
那須塩原市役所に話を聞いてみると、今回の発表は4月上旬に国土交通省が「バックアップ」構想の取りまめをしたのがきっかけ。そして、同市は国会誘致など過去にも積極的にアピールしていた、と強調した。12人のプロジェクトチームを4月26日にも立ち上げる予定だが、何ができるのかについてはこれから検討していくという。
国土交通省はこうした記事を読んで頭を抱えている。「首都機能移転」と「首都機能のバックアップ」が混同されたためで、この2つは全く別なものだという。
「首都機能バックアップに機能の移転はありません。もし誘致合戦などに発展するとしたらとんでもないことです」
「首都機能バックアップ」は限られた予算しかなく、現在あるものを有効に活用し、いかに災害時に首都機能の停止を防ぐかを検討しているものだと説明した。ちなみに、11年7月に廃止された首都機能移転企画課だが、仕事は国土政策局総合計画課が引き継いでいる。新たな動きがあるのかといえば、特にないそうだ。