「就活生の素を知るため、学生のFacebookを覗く」――こんな動きが企業の間で広まっているが、インターネット上では批判の声があがっている。
若者の間では友人などとの交流のために使われることが多く、FacebookをはじめとしたSNSにはプライベートな空間というイメージがあるが、就活に影響してくるとなると、本音を言えない場所になっていくのではないかと懸念されている。
「写真は笑顔のアップ、友人は50人以上」がカギ
2012年4月19日放送のNHK「おはよう日本」で、企業がFacebookを利用して履歴書や面接ではわからない学生の素顔を見極めようとする動きが広がっているという特集が放送された。
金沢市のある不動産会社は12年から、面接を受けに来た学生のFacebookチェックを行っている。学生の交友関係や日常生活から素顔を知るためだ。
面接で「おとなしい」という印象を受けた女子学生のFacebookページを見たところ、友人の人数は295人、書き込みの内容も自分で就活生が集まるイベントを企画したという主旨のものなど、意外と活発で人望があることが読み取れたという。採用担当者は「面接は練習してくるから、ありきたりな答えしか出てこない。学生が友人にどう思われていて、本当はこういうところがあるなどということがわかるので、Facebookは活用できる」とコメントしている。
学生がそうした企業の視線を利用しようとする動きもある。都内のある就活セミナーでは11年から企業に好印象を持たれるためのFacebook対策のレクチャーを行っている。ポイントは「プロフィール写真は正面から撮った笑顔のアップ、友人の数は50人以上、週2回以上前向きな内容の書き込み」の3点だ。
11年夏にこのセミナーを受講した学生は、プロフィール写真をペットのものから自分の笑顔の写真に変更し、友人も年末までに50人から163人に増やした。またIT企業を志望していたので、自作のAndroidアプリのアピールを積極的に書き込んだ。すると12年1月に第一志望の企業から内定がもらえた。この学生はFacebook対策をしたことが内定につながったと考えているという。
「面接の時間長くすればいいのに…」学生からも非難
就活中であることを表明している学生のFacebookページをいくつか見てみると、就活対策のためにやっているかは定かではないが、正面から撮影した笑顔の写真や、きれいに写っているプリクラ画像を使っている人が多い。書き込みの内容は友人と出かけたことを写真付きで報告するものや、企画したサークルのイベントなどの成果報告など、充実した生活ぶりをうかがわせるものが目立つ。友人の数も50人どころか100人を超えている人が少なくない。
しかしNHKの放送を見た人はツイッターで、「良い子ちゃんfacebook作成講座とか…学生さんも大変ね」「もっと自然体で就活すれば良いのに。マニュアル人間ばっかりだ」などと、Facebookまでも就活の材料にされてしまう学生への同情をつぶやいている。また、「プライベートエリアに見知らぬ人が土足で立ち入ってくる不快感。自分の部屋に知らない人が入ってきて、本棚やクローゼット、PCを見られるのと同じくらい気持ち悪い」「いいこと書いた『よそ行きの顔』見せる努力ばかりして、ますます本音が書けなくなるな」など、そうした就活のあり方を批判するツイートも見られる。
都内で就活中の女子学生の1人は、「学生のことを知りたいというなら、1人あたりの面接の時間を長くするなどの方法をとればいいのに。Facebookを利用されるのは嫌だ」と話していた。