ソニー、「テレビ脱却」の先が見えない 新経営方針に市場は反応せず

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   ソニーの平井一夫社長は2012年4月12日、約1万人の人員削減などを含む新たな経営方針を発表した。経営の中心にありながら、2012年3月期まで8年連続で赤字を垂れ流し続ける、テレビ中心の経営からの脱却を図る。

   ただ、「テレビの次」と位置づける携帯端末などは世界的な競争が激しく、「成長事業」としての育成には困難も予想される。そうした不安からか発表翌日13日の株価は日経平均が1.2%上昇する中、5.5%安と大幅反落した。4月1日に就任したばかりの平井社長の船出には早くも荒波の気配が漂う。

他社との提携にも含み

   ソニーは昨年11月、それまで「年間4000万台」としていたテレビの中期販売目標を2012年3月期については2000万台に「半減」させている。さらに、テレビはこのところ年間3割程度も価格下落しており、日本で売れ筋の32型は最近では3万円余りの水準に落ち込んだ。付加価値として期待された3D機能もさほど消費者の支持を得られていない。世界的な競争も激しいテレビ事業は利益を生みにくい構造が定着し、今や明らかに経営を圧迫している。

   新たな経営方針では、テレビ事業をソニーのコアビジネス(中核事業)から外す転換を図った。一方で固定費を6割削減するなどして2014年3月期の黒字化を目指し、ソニーの事業として維持することも明言した。具体的には液晶パネル調達や人件費などの固定費を削減し、流通や在庫管理などの費用も30%カットする。機種数も40%減らし、効率化を図る方針だ。

   一方で有機EL(エレクトロルミネッセンス)テレビと超小型の発光ダイオード(LED)を使った独自開発の超高画質「クリスタルLED」テレビの商品化も表明した。ただ、発売時期は示さなかった。他社との提携について平井社長は「さまざまな可能性を残している」と述べ、含みを残した。また「次世代テレビ」として韓国サムスン電子が巨額投資している有機ELテレビについては「他社との協業を視野に入れている」と述べ、自社生産しない方針を示唆した。

   今後はカメラなどのデジタル画像、ゲーム、携帯端末の3事業をコアビジネスと位置づけ、研究開発費の70%を集中投資する方針も表明した。

さらなる抜本的な見直しが必要か

   デジタル画像では、世界シェアトップクラスの画像センサー技術を放送局向けビデオカメラや、一般向け高級デジタルカメラなどに生かす。デジタル画像技術を生かした内視鏡など医療事業も強化する。携帯端末では、グループ内で利益を生む事業に成長した映画や音楽を配信するサービスを拡大し、他社との差別化を図る。

   ただ、ソニーの2011年4~12月期の分野別営業損益を見ると、損害保険や銀行などの金融が858億円、音楽が337億円、映画が256億円の黒字なのに対し、デジタル家電・ゲームは1186億円、携帯電話は462億円のそれぞれ赤字で、とても家電メーカーとは思えない状況なのが実態だ。

   4月13日に株価が急落したのも、こうした実態を踏まえて、新たな経営方針で本当にソニーが復活できるか疑念が強いためと見られる。米アップルのタブレット型端末「iPad」のような機器が進化すれば、テレビが「家電の王様」と呼ばれた時代も過去のものになるかもしない。市場や業界内では、早晩、もっと抜本的な経営の見直しが必要になる可能性が、早くもささやかれている。

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