東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の観光産業を支援するために、政府が行っているキャンペーン「東北観光博」の公式ウェブサイトの外国語版に多数の誤訳が見つかり、一時閉鎖に追い込まれている。
機械翻訳を利用したため、固有名詞が直訳されて意味が通らなくなるケースが続出した。指摘があるたびに誤訳を修正してきたが、ついに追いつかなくなった形だ。
「内容は100%正確なものではないかも知れない」
観光博のウェブサイトは2012年1月30日にオープン。2月末には英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語版も公開された。観光博のイベントは3月18日に開幕。ウェブサイトのアクセス数が伸びるにつれて、4月に入ってから誤訳の指摘が急増した。ウェブサイトには、
「ウェブサイトは機械翻訳を使って翻訳しています。内容は100%正確なものではないかも知れないという点にご注意ください」
という一応の注釈はある。ウェブサイトの作成スピードを上げ、経費を削減することが目的だったが、それでも誤訳の内容は、あまりにもお粗末だった。
英語版では秋田を「tired」(飽きた)と訳した部分があるほか、国の重要文化財にも指定されている男鹿市の「赤神神社五社堂」(あかがみじんじゃごしゃどう)を「five red gods company temples」と訳した。石川啄木の法要「啄木忌」は、「woodpecker mourning」(キツツキの哀悼)だ。「旧伊達邸」は、「kyu itatsu tei」になってしまった。誤訳は英語だけにとどまらず、中国語版では「ナマハゲ講座」が「光頭病講座」(はげ頭講座)と紹介された。誤訳の大半が固有名詞だ。
批判を受けて、ウェブサイトを管理する観光庁は4月13日に、外国語ページを一時閉鎖した。内容を修正した上で、4月下旬には再開したい考えだ。
ただし、この一時閉鎖を発表する英文にも疑問の声が出そうだ。日本語の発表文には「多言語サイトを一時閉鎖」とあるが、英文は「temporally suspend the multi-language versions of~」。「temporally」(時間的に)は「temporarily」(一時的に)の誤りとみられる。
秋田県知事「土地勘がない人がやると、こうなるんですよね」
ウェブサイトをめぐっては、東北の自治体からも批判が出ている。秋田県の佐竹敬久知事は4月16日の定例会見で、
「誰だって正確に書いて欲しいというのは当たり前。非常に(ウェブサイト作成を)急いだということが、あの要因になったと思われる。閉鎖して直しているようだが、そういう形になって残念」
と分析。佐竹知事の説明によると、各自治体から日本語の観光案内の文章を観光庁に提出した上で、それを観光庁が各国語に機械翻訳したという。ただし、各県でも英語や韓国語の観光案内を作成していることから、
「土地勘がない人がやると、こうなるんですよね」
「既存のものを使ってやることもできた」
と、各県から外国語で情報提供を受けるべきだったと指摘した。