北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党第1書記が、公の場で演説を初めて披露した。祖父で「建国の父」である故金日成主席と「声がそっくり」と指摘されたが、演説しながら体を左右に揺らす仕草については見方が分かれた。
「落ち着きがなく、不安感が表に出た」と批判的な見方が出る一方、この動作も「祖父、日成氏とそっくり」との指摘もある。正恩氏が「体を揺らしながら」話したのは、演説として失敗だったのか、それとも「建国の父」を連想させるため、「作戦成功」だったのか。
「声真似るため高度な訓練した結果」
29歳とされる正恩氏が、祖父の日成氏のカリスマ性に頼るイメージ戦略を展開していることは、広く知られている。左右側頭部を刈り上げる髪型も似せており、服装も人民服やスーツ姿という祖父スタイルを踏襲している。父、故金正日総書記はジャンパー姿が目立った。歩き方も祖父を真似ているようだ。
正恩氏は2012年4月15日、金日成主席生誕100年を祝う閲兵式でマイクの前に立った。黒っぽい人民服姿で、「軍隊を強化しなければならない」などと約20分間、演説した。
下を向いて原稿を読んでいることが多く、いわゆる力強さを印象付ける話しぶりではなかった。現地の朝鮮中央テレビは、演説の模様を生中継した。
父の正日氏が肉声を「大衆」の前で披露したのは、1992年にあった人民軍創建の記念式典の際に「英雄的朝鮮人民軍将兵らに栄光あれ」と言ったのが「最初で最後」とされ、正恩氏は父とは対照的な行動を取ったことになる。
一方、祖父日成氏は例年、年頭演説を公開していた。正恩氏とその周辺が「祖父スタイル」路線を指向しているのは明らかだ。
韓国の中央日報(日本語版サイト)は、正恩氏の演説について「力がないように聞こえるが、金日成の声を真似るために高度な訓練をした結果」との「音工学」専門家の分析を伝えている。
日本のワイドショーでは、「迫力ない」(小倉智昭キャスター、フジテレビ系「とくダネ!」4月16日放送)といった感想が寄せられていたが、「迫力のなさ」は「意図的だ」というわけだ。