胎児期や生後の外圧で軟らかい頭蓋骨が変形する斜頭、短頭の治療法が2012年4月11日、東京で開かれた日本形成外科学会で注目を浴びた。国立成育医療研究センター感覚器・形態外科の金子剛部長 (形成外科) は「子どもはいじめの対象になりやすい。そのまま大人になると、眼鏡や帽子が使いにくいうえ、コンプレックスからノイローゼ状態になる人も多い。小児科医や産科医はもっと関心をもってもらいたい」と訴えた。
数か月の治療で大きな効果
同センターでは昨年11月、形成外科医とリハビリテーション科が協力し、週1回自費診療の「あかちゃんの頭の形外来」を開設した。頭のゆがみを正すには寝る向きを変える、あるいは特別の枕やマットレスを利用するなどもあるが、金子さんらは米国で最も有効とされている形状誘導ヘルメットを導入した。
自然に動いている状態で赤ちゃんの頭の形をレーザースキャナーで測り、データを米国に送ってヘルメットを作ってもらう。ヘルメットはミシガン大学が開発したもので、プラスチック製約230グラムと軽く、通気孔が多い。ほぼ1日中着用し、治療は数カ月で完了する。ヘルメットは前後に分割式で大きさが調節できるようになっており、1個ですむ。
金子さんらの専門外来にはこれまで43人が受診し、25人にヘルメットを作成した。発表時点で治療を完了したのは 3人だけだが、いずれも重症度分類では大きく改善した。自費診療の料金は計50人までは研究費があるため、ヘルメット代の10万円だけだが、それ以降は改めて適切な料金を設定したいという。
「早期であるほど治せるが、私たちの外来の受診時期も欧米にくらべると遅い。できれば予防すべきだ。これからはお母さん方への啓発にも力を入れたい」と、金子さんは話している。
(医療ジャーナリスト・田辺功)