「このまま終わったら一生後悔する」 カフェテラス再開にかける思い【福島・いわき発】

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   いわき市平の薄磯海岸にカフェテラス「サーフィン」があった。経営者の鈴木富子さんが31年前の4月20日、開業した。店は自宅に隣接して立ち、遠来の客は1階に車を止めて海の見える2階でくつろいだ。


   鈴木さんはキルトなどの手仕事をライフワークにしている。3・11の大津波で店が流され、裏の自宅1階が津波にぶちぬかれた。家は立っているが、住める状況ではない。内郷の雇用促進住宅で「仮の暮らし」をしている。


   被災後、確かめると、タンスのキルトが海水につかっていた。流されて砂に埋もれたキルトを回収した。店の看板、食器なども見つけた。


   思い出の詰まったモノたちとともに、鹿島ショッピングセンター「エブリア」で「甦(か)えってきたキルトたち――カフェサーフィンすずきとみこの手仕事展」を開いた。津波に負けたくないから。それが昨年の10月29、30日。次は店の再開だ。


   31年前に開業した4月20日に合わせて、常磐湯本町で「サーフィン」を再開業する。場所はJR常磐線湯本駅に近いメーンストリート(天王崎)の「菓子角田屋」跡だ。


   日曜日(4月8日)、改装中の店をのぞき、再オープンにかける彼女の思いを聞いた(=写真)。


   なぜ湯本か――。母親の出身地で自分も湯本駅前で生まれた。3・11から半月余、被災したわが家を見て直観的に思った。「今度店を開くなら湯本だ、このまま終わったら一生後悔する」


   自分の居場所であると同時に、お客さんにとっても居心地のいい場所にする。自宅と元の「サーフィン」をイメージして、大工さんに古材の調達を頼んだ。柱や床にそれが反映されている。テーブルと長いすは薄磯と同じものをそろえた。コンクリートのたたきにはビー玉を埋めた。


   メニューも31年前のものを中心に据えた。焼き肉ランチ・ナポリタン・ミートソース・サンドイッチ・グリルサンド・焼きそば・焼きうどん。これに、コーヒー、手づくりのケーキなどが加わる。


   "復興カフェ"の開店まであと10日。その準備に追われるのもまた楽しい。そんな様子の鈴木さんだった。

(タカじい)



タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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