円高で海外進出コストが下がる
メーカーでも、従来は「内需型」とされてきた日用品、食品、製紙などでも、現地企業の買収などを梃子に市場を開拓する動きが近年、活発化している。衛生用品などのユニ・チャームは年内にインドで2か所目の紙おむつ工場を建設するなど、同国での売上高を3年後に倍増させる計画。殺虫剤のフマキラーもマレーシアとインドネシアの生産販売会社を買収した。
こうした海外展開の背景には日本の人口減とデフレで国内市場が頭打ちになっていることがある。この間の円高で、海外進出のコストが安くなっているのも追い風になっている。
アジア市場の将来性への期待も大きい。総合研究開発機構(NIRA)の推計によると、日本を除く中国や韓国、インドネシア、タイなど成長が見込まれるアジア10カ国・地域では、年間の世帯可処分所得が5000ドル(約40万円)以上の中・高所得層は2010年の10億8400万人から、2020年には19億4600万人、2030年には25億8800万人に拡大すると予想されている。
こうした国々は「まだ高度成長期の日本のような段階にあり、日本で通用しなくなったGMS(総合スーパー)といった業態もまだまだ通用するなど、ビジネスチャンスは大きい」(貿易関係筋)。
日本の貿易収支は大震災後、輸出不振と原発停止に伴う火力発電のための燃料輸入の急増を主因に赤字基調が続いているが、1月は経常収支が赤字に転落し、ショックを与えた。円高からの本格反転も期待できない中、「製造業の区国内生産の空洞化という大きな流れも変わらない」(財務省筋)とあって、海外投資からの利子・配当など所得収支が日本経済の生命線を握る可能性が高い。ここは内需型企業にもアジアで大いに稼いでほしいところだ。