秋田県内の市町村職員の互助会事業を行う財団法人秋田県市町村職員互助会が、東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けたと、企業情報の東京商工リサーチが2012年4月11日に発表した。負債総額は100億6790万円にのぼる。
同社によると、職員互助会の破たんは1990年以降、2010年11月に大阪府市町村職員互助会が自己破産(負債総額15億3000万円)した1件だけ。しかも、「100億円もの負債を抱えての破たんはない」(情報部)と驚いている。
会員の脱会止まらず
互助会が破たんした原因は、会員の脱会が相次いで、資金不足に陥ったためだ。
秋田県市町村職員互助会は、18市町村と事務組合など30団体で構成する財団法人として設立。職員への掛け金の返還のほか、祝い金や見舞金・弔慰金の給付、医療費や人間ドック助成・貸付などの生活支援事業を行ってきた、市町村職員などのための福利厚生を担う、ごく普通の互助会だった。
しかし、このうち会員の退職(脱会)の際に払い戻す掛け金の返還金制度について、従来公費からの補助金、つまり税金で一部を負担してきた。これが問題視された。
いくら自治体職員のためとはいえ、互助会への公費負担をめぐっては、「税金による優遇」「ヤミ退職金」批判が高まり市民団体が訴訟を起こし、2010年9月には兵庫県高砂市が職員互助会に支出した負担金を、最高裁判所が違法と認定した。
これを受けて、秋田県でも11年度から職員互助会への公費負担を廃止。その結果、それに伴い返還金が減少したことで、会員が不満を膨らませ、脱会が相次いだわけだ。
互助会の2011年3月期の事業活動収入は7億9971万円、当期収益は2億9220万円の赤字。その後、運営も困難と判断して11年8月に清算業務に入っていたが、債務を整理しきれずに破産手続きに移行した。
帝国データバンクの調べでは、約100億円の負債のうち、掛け金の払い戻し対象者は5402人で55億3819億円。医療費給付の対象者が8434人で、17億4230万円いるという。
払い戻し対象者の掛け金は一人あたり100万円にものぼるが、それは「ほぼ戻ることはないでしょう」と話す。
最高裁判決が「引き金」なのか?
どうやら、互助会破たんの遠因は最高裁判決にあるようだ。大阪市中央区の社団法人大阪府市町村職員互助会は、2010年11月に大阪地方裁判所へ自己破産を申請し、破たんした。
秋田県市町村職員互助会と同様に、職員に対して見舞金や祝い金、退職金などを給付する福利厚生事業を行っていたが、市町村から得た補助金を使っていたことが、高額な「ヤミ退職給付金」と揶揄されて評判が悪化。茨木市で起こった住民訴訟に敗訴したことで60億円規模の補助金の返還をしたものの、全額返還は困難と判断し、自己破産を選んだ。
このときの負債総額は約15億3000万円。会員の掛け金も戻っていない。
地方自治体も「財政難」で削れる補助金は削れるだけ削りたい。最高裁判決を理由に、多くの職員互助会で公費支援が廃止に追い込まれていて、「規模はともかく、互助会の破たんは1年で数件ずつ、まだあるでしょう」(帝国データバンク)とみている。