お上の「賢い」おカネの使い道、実は単なる無駄遣い
(3)は、ちょっと深刻だ。政府が使い道をうまくすれば成長するというのだ。この話は、増税で税が増収になったとしても、その分を「政府がうまく」使ってしまうので、実は財政再建には回らなくなる。これを話す人は、前に話した(2)をすっかり忘れているのだから始末に悪い。
しかも、「政府がうまく使えば」という件で、例えば介護などとか、知ったかぶりをさらけ出す。こうした例は官僚から仕入れるので官僚迎合が露見する。増税してそれをうまく役所が使うという論法は、増税せずに民間におカネの使い方を任せていたら経済は成長しないということだ。
お上はおカネの使い方も下々の民間より「賢い」ので、「おカネの使い方はお上に任せるように増税する」と言っているのと同じだということを、増税を熱心に説明する某編集委員は気がつかない。これまで税金を吸い上げられ、お上が「賢く」使ったはずのおカネは、実は単なる無駄遣いだったことはいうまでもない。
この大手新聞の某編集委員は、マスコミ界では上層階級である。その下にいる地方新聞、テレビ局、週刊誌などに「とんでも増税」を説明している。マスコミ界ではとても横柄で、下層階級の人が少しでも反論しようとすると、「不勉強」をなじられるようだ。マスコミ界では上層階級でも、役所から見れば飼い慣らされた下層階級だ。ここに書いたような話は役所が教えてくれないから、何もいえない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。