「官業による民業圧迫」との」批判消えず
ところが、肝心の金融2社の行方が覚束ない。貯金とかんぽの残高は2007年10月の計337 兆円が、2011年末には288 兆円まで減っている。もちろん、運用難の昨今、運用能力を超える資金はリスクを高めることになるから、残高は多ければ良いとは限らないが、郵政の場合、資産の7~8 割を利回りの低い国債で運用しており、一定の規模は必要で、現在のコスト構造のまま貯金だけの残高が150兆円を割ると赤字に陥るとされる。
一方で、国債による運用は、安定性に優れる半面、収益力は乏しく、金利の上昇局面では利ざやの縮小、さらに保有する国債価格の下落に伴う含み損の発生というリスクもはらんでいる。
そこで、運用の多様化が「郵政が生きていく上で不可欠」(総務省筋)になる。国債を買うだけでなく、融資等の新規業務をいかに拡大していくか、ということだが、これが簡単ではない。
新規事業として具体的に考えられるのが、ゆうちょ銀行では住宅ローン、かんぽ生命ではがん保険など「第3分野」といったもので、要は、民間銀行と同等の事業をできるようにしたいというのが郵政の悲願だが、国の関与が残る以上、「官業による民業圧迫」との批判は免れない。