経営破綻し会社更生手続き中の半導体大手、エルピーダメモリの支援企業を決める第1次入札が2012年3月末に締め切られ、提示金額上位3社の米マイクロン・テクノロジー、韓国SKハイニックス、米系投資ファンドのTPGキャピタルが4月末の第2次入札に進むことになった。
2009年に日本政府から公的資金300億円を投入された「日の丸半導体」エルピーダは、外資の支援のもとで再建を進めることになった。第1次入札の提示金額が低く落選した東芝はハイニックスと組んで2次入札に進むことを模索しているが、いずれにしろ主導権は外資が握ることになる。
蓄積した技術力が魅力
エルピーダはパソコンや携帯電話などに使われる記憶装置で「DRAM(ディーラム)」と呼ばれる半導体のメーカー。世界のDRAM市場のシェアは韓国のサムスン電子、SKハイニックスに次いで3位。1999年にNECと日立製作所が事業統合して誕生し、2003年には三菱電機の事業も統合。日本で唯一のDRAMメーカーだが、市況悪化に円高も追い打ちとなって経営に行き詰まり、2月27日に会社更生法の適用を東京地裁に申請した。
収益力が悪化し落ちぶれた国策半導体メーカーとはいえ、長年蓄積した技術力では韓国勢に引けを取らない。そうしたこともあってスポンサーに手を挙げる企業は世界に広がり、国際争奪戦の様相となっている。
最有力と見られているのが、DRAM世界シェア4位の米マイクロン・テクノロジーだ。もともと、エルピーダの坂本幸雄社長が資本提携先として交渉をしていた経緯もある。第1次入札でも最高額と見られる1500億円超を提示した模様だ。エルピーダ同様、韓国勢に遅れを取っているマイクロンとしては、技術力も併せ持つ3位のエルピーダを買収して規模を拡大し、攻勢に出たい考えだ。
一方、DRAM2位のハイニックスのシェア(22%)は、首位のサムスン電子(45%)の半分以下にとどまる。ハイニックスは背中が遠くなる一方のサムスンへの対抗心が強いとされており、シェア12%のエルピーダは魅力的に映っているようだ。
東芝も参入を模索
東芝は、そのハイニックスと連合を組むことを模索している。赤字続きのDRAM事業から撤退した東芝だが、エルピーダの持つスマートフォン向けDRAM技術に関心を寄せている。なぜなら、東芝はDRAM撤退後も、デジタルカメラのデータ保存などをする「NAND型フラッシュメモリー」と呼ばれる半導体事業には今日まで注力してきている。
こうした中、最近需要が急増しているスマートフォンについては、DRAMとNAND型フラッシュメモリーを組み合わせて納入できる半導体メーカーが顧客を獲得しやすい優位な状況に立っている。東芝としてはエルピーダのDRAMを手に入れられればサムスンなどへの対抗力がつくというわけだ。
一方、米TPGキャピタルは中国の企業再生ファンドと共同応札すると見られる。両社ともエルピーダが主取引先の中国パソコン最大手のレノボグループと関係が深い。エルピーダを韓国勢に奪われたくないレノボの意向を受けているようだ。
世界を巻き込んだ争奪戦が展開されるエルピーダのスポンサー選び。第2次入札は4月末に締め切られ、5月には1陣営に絞られる運び。どういう構図になっても世界の半導体地図が塗り変わることになりそうだ。