数千人が使用している大学のメールサービスが、最大5日間にわたって使えなくなるという事態が起こっていたことが明らかになった。サービスを移行する際の手順に不手際があったのが原因だ。
このサービスは、マイクロソフトが提供しているクラウドサービスで、他の多くの大学でも利用されているが、同社では「他の大学で同様の障害が起こる可能性はない」としている。
メール環境を「アウトルック ライブ」に移行
トラブルが起こったのは、札幌学院大学(北海道江別市)のメールシステムで、学生や教職員約7000人が利用している。元々、同大学では、マイクロソフトが教育機関向けに提供しているホットメール(Hotmail)と呼ばれるメールシステムを利用していたが、マイクロソフトがこのサービスの提供を終了することになったため、メール環境を「アウトルック ライブ」(Outlook Live)に移行することになった。
ところが、データの移行をする際、札幌学院大学の環境では、旧システムで読んでいたメールを新システムで読んだ場合、文字化けが発生することが判明。このため、大学とマイクロソフトとの協議の結果、(1)新システムに作成されていた未使用のアカウントを一度削除(2)再度、新システムにアカウントを作成(3)旧システムから新システムにデータをコピー、という手順をとることになった。
大学のメールアドレスを使って就職活動をしている学生に影響?
2012年4月6日午前、マイクロソフトが提供したコマンドを使用して、大学の担当者が(1)の作業を行ったが、マイクロソフトから「コマンドに一部不十分なところがあった」と連絡があったため、大学の担当者は4月9日に追加の作業用コマンドを実行した。この結果、4月6日の作業で経営学部の学生1000人、9日の作業で残りの利用者6000人のアカウントが使えなくなってしまった。具体的には、過去の受信したメールを見ることもできないし、アカウント宛てにメールを送っても、エラーメールが戻って来てしまう状態だ。大学側の発表では、「本学ユーザーのアカウントそのものが削除」されたと説明されている。
大学のメールアドレスを使って就職活動をしている学生には大きな影響があった可能性もある。ただし、情報処理課の説明によると、実際に問い合わせがあったのは10件程度だったという。
10日に復旧作業
マイクロソフトでは4月10日に復旧作業を行い、現時点では障害は回復している。大学側でも、4月11日夕方に全アカウントのパスワードを初期化するなどの作業を完了している。
日本マイクロソフトでは、
「文字化けに関連して、札幌学院大学に特別な対応を行う中での障害で、他大学で同様の障害が起こる可能性はない」
と説明。障害の事象そのものについても、
「メールシステムにログインするためのID情報と、利用者のメールボックスとの『ひも付け』が外れてしまい、メールが使用できなくなるという事象が起こった。利用者の情報やメールデータそのものが削除されたり、消失した訳ではない」
と、大学側の説明と、やや食い違っている。