失脚前提に過去の「悪事」がばらされる
中国国営の新華社通信は2012年4月10日、谷氏がヘイウッド氏の死に関与した疑いがあるとして身柄を拘束され、司法当局に送られたと伝えた。先のWSJの記事によると、ヘイウッド氏は生前、谷氏が身内に裏切られたと強く思い込んでおり、谷氏と仲たがいした後に「自身に危害が及ぶのではないか」と知人に話していたという。ヘイウッド氏の死因は当初アルコール中毒とされたが不審な点も多く、再捜査の末に谷氏の逮捕となった。
仲たがいの原因はビジネス上の金銭のもつれとも言われているが、現時点では詳しくは分からない。ただ、薄氏の一連の解任とは関連がありそうだ。安田氏は、「中国では『悪事が明らかになったから失脚する』のではなく、『失脚を前提に、あれこれと悪いことがばらされる』のです」と説明する。中国の政治家は大なり小なり、あまり表ざたにしたくない「傷」を持っているようだが、通常それが暴露されることはない。だが権力闘争で失脚する者に対しての「理由づけ」として、過去の「罪」を表面化させることはあるという。元上海市長で2006年に失脚した陳良宇氏なども、はじめに失脚ありきのシナリオで、「汚職」を暴かれた可能性が高いそうだ。
仮に妻が殺人犯となれば、薄氏本人が犯罪に手を染めていなくても身内の不祥事として、当然政治の表舞台に立ち続けるわけにはいかなくなる。今後、さらなる追い打ちがかけられるかもしれない。