電機大手のシャープ株が揺れている。2012年4月11日は4日続落。始値は前日比20円安の510円を付けたが、すぐに505円まで下がった。
前夜に、シャープは12年3月期の連結最終損益が3800億円の赤字(前期は194億円の黒字)になると発表。従来予想の2900億円の赤字から赤字幅が約1000億円も広がったことで、「嫌気売り」が広がったとみられる。
赤字幅広がり、投資家に動揺
シャープは2月、第3四半期決算(4~12月期)の最終損益で2135億円の赤字を計上。通期で2900億円の赤字になる見通しを発表していた。期初の時点では60億円の最終黒字を予想していたが、液晶テレビの予想以上の不振に加えて、太陽電池(液晶パネル)事業も中国や韓国の低価格競争に圧されぎみで稼働率が下がっていた。
そんなことから、シャープの株価もジワジワ下落。3月23日には前日比20円安の472円まで売られ、さらに26日には467円まで値を下げて、年初来安値を付けた。株式分割の影響を考慮すると、1980年以来約32年ぶりの安値水準になる。
それを一気に反転させたのが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との資本・業務提携だ。鴻海グループがシャープの筆頭株主になると同時に、シャープの子会社で液晶パネルの主力工場である堺工場を運営するシャープディスプレイプロダクト(SDP)の株式を一部譲り受けると発表した。
シャープ株は、この発表の翌3月28日には提携に好感した投資家からの「買い」が殺到し、ストップ高の570円に。29日には一時619円まで上昇、終値は前日比38円高の608円と3日続伸。この日の売買代金は東証1部の売買代金ランキングで首位になるなど、今年一番の大商いとなったほどだ。
ところが4月10日に赤字幅の拡大と、シャープが保有するSDP(堺工場)株を大日本印刷と凸版印刷に売却することが明るみになると、これを材料に株価は急落。一時は前日比29円安の525円に下げた。
それにしても、3月期決算で同じように大幅赤字を予想するパナソニックやソニーと比べても、シャープの株価低迷は目立つ。背景には、業績予想の下方修正が度重なったことがあるようだ。
人員削減に事業縮小でも「技術力」が残った
一方、シャープは社員の給与を5月から12月まで、2%削減することを労働組合に提案し、「現在も協議中」(シャープ)。また、管理職については4月から給与改定をしたうえで5%減額。執行役員以上の役員は2月から報酬を10~30%減額しており、12年度の賞与も支給しない。
さらに13年度入社の国内採用計画では、大学卒(大学院、高専、中途を含む)の採用予定者を、技術系80人、事務系50人の計130人にする。12年度入社の240人と比べて、ほぼ半減に絞り込むことにした。
シャープの1983年度の大卒採用は、最も多い約1300人だった。その1割まで減らす一方、海外の採用枠は12年度と同じ400人とする計画で、新興国を中心に「地産地消」の事業戦略を敷く、海外シフトが鮮明だ。
国内事業は、「売りもの」の液晶部門を手放し、人員を削り、なにが残るのだろうか――。
シャープは、「白物家電やドキュメント事業もありますし、液晶事業もフレームワークを変更するだけで、事業は継続していきます。協業によって、わたしどもは技術開発や設計に力を割いて、そこで他社に負けない製品を生み出ていきたい」と、力説する。