太陽光や風力などの再生可能エネルギーでつくった電力を割高な価格で買い取る、電力の全量買取制度が2012年7月に導入されるのを前に、中国の太陽電池大手、インリーグリーンエナジーが日本でメガソーラー(大規模太陽光発電)向けの太陽光発電システム市場に参入する。
これまでは販売代理店を通じて住宅用ソーラーを供給してきたが、4月中にも東京都内に日本法人を設立。「低価格」を武器に攻勢をかける同社に、国産メーカーは戦々恐々だ。
太陽電池シェア、輸入品は20%に拡大
矢野経済研究所によると、国内の太陽光発電システム市場は、2015年度には1兆4797億円(10年度に比べて225.8%)に、20年度には1兆7000億円(同263.2%)の規模にまで急拡大する、とされる。
その背景には、12年7月に開始予定の再生可能エネルギー電気の全量買取制度がある。これまでは住宅用ソーラーが太陽電池市場をけん引してきたが、この夏からは、いよいよ産業用ソーラーが本格化する。中国の太陽電池大手は、そこに目をつけた。
海外勢の流入で、太陽電池市場のシェア争いは激しさを増している。太陽電池市場は08年まではほぼその全量が国産だったが、09年以降は中国や韓国メーカーを中心とした海外勢が台頭してきた。
2011年4~9月の太陽電池の国内出荷量に占める輸入品のシェアは、半期では過去最高の17.5%となった。それが10~12月には23.8%を占めるようになり、前期(6~9月期)に比べて4.8ポイントも伸ばした。
11年4~12月の輸入品のシェアは20%で、海外勢は調査(3か月ごと)のたびにシェアを拡大している状況だ。
海外勢がシェアを伸ばすことで太陽電池の価格も下落が進んだ。太陽光発電普及拡大センターによると、国内の住宅用太陽光発電システムの平均価格は、2006~09年は1キロワットあたり60万~70万円で推移したが、11年7~9月は同52万9000円となり、過去最安値を記録した。
太陽光発電協会は、「海外メーカーの参入で(価格は)相当安くなっています」と指摘する。
中国メーカーの攻勢に、ドイツ大手も破たん
東日本大震災以降、海外勢の日本への視線は熱く、なかでも中国メーカーの「低価格攻勢」は止まらない。「(11年度は)円高の影響もあった」とはいえ、「国内メーカーより3~4割安く出回っている」(メーカー関係者)という。
国内のある太陽電池メーカーは、「これまで住宅用は(屋根の)施工などの関係もあって(国産を)使ってもらえたが、最近はお客様のほうから全体を安くあげるためにも価格の安い輸入品を使ってほしい、という声がある」と話す。
一方、国産メーカーの競争力は急激に低下している。シャープや京セラ、三菱電機などの国産メーカーは、太陽電池市場がこれまでドイツを中心とした欧州市場が「主戦場」だったこともあり、輸出に熱心だった。
ところが、成長が続いてきた欧州でドイツなどが太陽光発電向けの導入支援策を相次いで縮小したため、「市場が目に見えてしぼんできた」(メーカー関係者)という。シャープの太陽電池事業はそれもあって、2011年上期(4~9月期)は営業赤字だった。
さらにそのドイツで、太陽電池大手のQセルズが法的整理を申請すると、2012年4月2日(現地時間)に発表した。08年にはシャープを抜いて世界シェアで首位となった同社だが、その後は低価格攻勢をかける中国メーカーにシェアを奪われ、10年には6位まで後退。価格競争に敗れ、赤字体質に陥っていた。
中国メーカーの本格参入で、気がつけば「お膝元」での価格競争がより熾烈になってきた国産メーカーが、「明日はわが身」にならないことを祈りたい。