ツバメが今年もいわきへやって来た。3月30日、イトーヨーカドー平店そばの禰宜町跨線橋付近を飛び交っていた。NGOのシャプラニールが運営する被災者のための交流スペース「ぶらっと」が、いわき駅前のラトブから駅東のヨーカドーへ引っ越した。その作業を手伝った帰りの初認だった。
厳冬のわりには、飛来は平年(4月11日=旧小名浜測候所調べ)より早い。ツバメにとっても「原発震災」2年目か、などと感慨にふけっていたら、2月初旬に共同通信がロンドン発で伝えた野鳥の放射性物質影響調査の不思議な記事を思い出した。
2月3日付の英紙インディペンデントに載った記事の要約だった。日米などの研究チームの調査によって、チェルノブイリ原発周辺より「福島の方が生息数への影響が大きく、寿命が短くなったり、オスの生殖能力が低下したりしていることが確認されたほか、脳の小さい個体が発見された」。
2月12日 付小欄で次のような疑問をつづった。――いつ、どういうふうに調べたのかは書かれていない。が、3・11からまだ11カ月。鳥の交尾・産卵・孵化は基本的 に一回きりだろう。なのに、随分詳細な知見が得られたものだ。寿命が短くなった? 調査が始まったばかりでそこまでわかるものなのか、と。
おととい(4月4日)、新聞の切り抜きを整理していたら、2011年9月8日付朝日新聞の「生物の静かな変化にも目を/チェルノブイリ研究者 福島でデータ収集」という記事が目に留まった。
そこには(1)夏に福島県内各地で、日米欧の研究者が放射能汚染の影響を調べて回った(2)計300カ所。一日14時間、100メートルごとに立ち止まり、5分間で聞いた鳥の声や見つけた昆虫、植物の生育状況などを詳しく記録した(3)警戒区域には入れなかった――とある。共同の「日米などの研究者」と朝日の「日米欧の研究者」は別か、別とは思えない。
「チェルノブイリでは、比較的汚染が少ない地域でもツバメの精子の異常や繁殖率の低下、くちばしや羽の奇形などの異常が増えていることが、過去の状態が書かれた膨大な文献との比較で分かった」(朝日)。福島ではなく、チェルノブイリだ。それも「膨大な文献との比較」の結果というから、長い時間をかけてのうえだろう。
昨年6月8日、いわき市川前町~川内村~田村市都路町ルートで実家の田村市常葉町へ帰った。母親の生家(都路町岩井沢)近くの店舗で、ツバメが営巣しているのを確認した(=写真)。この店の軒下では、私が小学生のころもツバメが子育てに励んでいた。そのことを思い出して、車を止めて様子をうかがっていたら、ツバメが巣に戻って来た。
親ツバメも、子ツバメも放射能の影響は受けただろうが、死んで解剖にでも付されなければ脳が小さくなったかどうか、などはわかるまい。共同の記事がいよいよ解せなくなったのだが、専門家にはそういうことがわかるらしい。
(タカじい)
タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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