「むざむざ重機の破壊にまかせてはならない」 かやぶき母屋の解体【福島・いわき発】

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   夏井川下流域の平菅波地区に古い神社がある。大國魂神社という。本殿が立つ鎮守の森があり、ふもとに宮司の山名隆弘さん、禰宜の息子さんそれぞれの居宅がある。かたわらで、かやぶきの母屋が圧倒的な存在感を放っている。


   この母屋は一時、いわき地域学會の役員会の会場になった。終われば、囲炉裏を囲んで一献――ということもあった。


   東日本大震災で神社や居宅が被害に遭い、母屋も「半壊」の判定を受けた。母屋は江戸時代から300年余の歴史を持つ。磐城平藩を治めた内藤家の一人、松尾芭蕉のパトロンだった露沾公が神社を訪ね、母屋の奥座敷を使ったという伝承もある。歴史的建造物だ。が、震災で傷めつけられ、いかんともしがたくなった。


   「むざむざ重機の破壊にまかせてはならない」(山名さん)。古建築史家の一色史彦さん(土浦市)のアドバイスもあって、母屋の解体材はアクアマリンふくしまに寄贈され、そこに移築復元されることになった。


   つまり、いったん「三百年余の使命を完遂して、一切を丁寧に解きほぐすこと」になった。そのための工事安全祈願祭がおととい(4月1日)午前、母屋前で行われた(=写真)。


   一色さんがあいさつした。「言葉に言霊(ことだま)があるように、家にも家霊(いえだま)がある」。いかにも家霊がこもっていることを実感し得るかやぶきの母屋だ。それが解体され、縁あってアクアマリンの一角で活用されるという、まれな例を胸に刻んだ。

(タカじい)



タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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