関税が無くなれば食品工業は元気になる
「TPP参入で日本は世界一の農業大国になります! 関税をなくせば国内の食品工業 はもっと元気になります」(浅川芳裕さん)
――それでは、ホットな論争になっているTPP問題について。参加すると日本はどう変わっていくと思いますか。
浅川 ずばり、世界一の農業大国になると思います。理由は、いま世界の食品貿易はほとんどが加工品だからです。日本では加工品を作るうえで大切な小麦、砂糖、バター、米の関税が200%以上かかっています。他国ではそういった「足かせ」はありません。今まで不公平な競争をやってきたと言えます。現状でも日本は生産額でみると国連統計で世界5位、世界銀行ベースで世界4位なわけですから、関税というボトルネックを解消すれば、世界の舞台でもっと競争ができます。
いまは関税が高いから工場も雇用もすべて海外に行っていますが、関税が無くなれば、将来的には国内の工場はもっと元気になるでしょう。
青山 私はやはり農業にはマイナスだと思います。米のシェアは維持できると思いますが、さとうきびやてんさいなどは品質上の優位性がなく、輸入品にとって代わられる可能性が高い。ただ、現実問題として参加を見送ることはないでしょう。ですから、「明日協定が結ばれる」と思って、いまできることをやりましょうと言いたい。品質がばらつく、利益が残らないなど、自身が抱える「課題」をいまのうちから解決していけばいいんです。個人的にはTPP反対ですが、やるべきことを後回しにしていては被害を大きくするだけだと思います。
古田 反対とか賛成ではなく、安全性と経済性の問題があるんですよね。経済的なことを考えれば自由化しても日本はクオリティが高いので大丈夫です。世界と戦っても太刀打ちできると思います。
ただ安全性の議論はされていない。そこが問題で、メディアはTPPがいいか悪いかしか言わず、安全性の議論は先延ばしにされている。いずれ開国していかなくてはなりませんが、いろんな問題を含んでいるので、「ルールづくり」を徹底すべきでしょうね。
新浪 TPPに参加すれば、より大規模な法人も出てきて、イノベーションも進み、「お客さま思考」が強くなります。つまりは「プロダクトアウトからマーケットインへ」ということ。お客様が求めているものを作るようになっていくでしょう。
古田さんから「安全性」のお話がでましたが、GMO(遺伝子組み換え生命体)やBSE(牛海綿状脳症)などについては、我々流通側がお客様にどう伝えていくかが大事になると思います。流通がちゃんと「GMO」だと伝えることが大事で、選ぶのはお客様です。おっしゃるように安全性の議論はぜんぜん進んでいませんから、農産物の輸出入に関するルールづくりは、今からですよね。
もうひとつ、種子など知財をどう担保していくのかも大事になります。
ただ、当たり前ですが、輸入ができなければ輸出はできません。TPP参入で輸出は確実にできるようになります。そもそも日本の安全性は高いし、厳しい日本のお客さまのスクリーニングかかったものは大変おいしい。海外では日本の作物をブランドとして提供したいですね。