SUV「CX-5」の受注好調 マツダ経営立て直し果たせるのか

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   マツダが大型増資と銀行借り入れで2100億円強の資金を調達した。2011年末時点で19.2%だった自己資本比率は25%程度に回復し、「社運をかけた車」と位置づける新型多目的スポーツ車(SUV)「CX-5」の受注も好調。新生マツダの滑り出しは上々に映るが、なお円高懸念がくすぶる中、単独で経営立て直しを果たせるのか。

   マツダが調達した資金は、公募増資で約1300億円、SMBC日興証券を引受先とする第三者割当増資で約140億円。加えて、メーンバンクの三井住友銀行などが計700億円の劣後ローンを融資した。

「業績悪化は震災やタイの洪水など一過性の要因」

マツダのCX-5
マツダのCX-5

   公募増資は「募集枠の3倍以上の応募があった」(関係者)といい、山内孝社長は2012年3月15日、東京都内で開いたCX-5の受注状況説明会で、「構造改革を投資家の皆さんから高く評価していただいた」と手応えを語った。

   そのCX-5は2月16日の発売後、最初の1カ月で月間販売目標の8倍を受注し、売れ行きは絶好調だ。増資で発行済み株式総数が6割以上も増えたにもかかわらず、マツダの株価は今回の新株の発行価格124円を上回って推移し、増資計画発表前と比べて大きく落ち込んではいない。

   だが、関係者の不安が一掃されたわけではない。マツダは2009年にも大型増資を実施したが、業績改善を果たせなかった「前歴」があるためだ。

   マツダの2012年3月期の最終損益は4年連続の赤字となる見通し。年間配当も2年連続で無配を予想している。マツダ関係者は「業績悪化は震災やタイの洪水など一過性の要因が大きい。前回の増資があったからこそ、CX-5などを開発できた」と強調するが、1株当たりの価値が希薄化した既存株主にとっては、不満はぬぐえない。

地元のマツダに対する期待は相変わらず大きい

   輸出依存度が高く、円高に弱い体質も引き続き懸念材料だ。マツダは今回調達した資金でメキシコなど新興国での生産設備を新増設するほか、円高でも利益が出るような生産技術の改革も進めている。ただし、足元で一時期より円安に振れている為替相場が、いつまた円高方向へ進むかわからず、体質強化は時間との競争になる。

   今回の劣後ローンの融資団には、地元の広島銀行や山口銀行、もみじ銀行が名を連ねた。筆頭株主だった米フォードが2010年にマツダ株を手放した際、引受先となってマツダを支援した住友商事などが今回の増資計画から距離を置いたのとは対照的で、地元のマツダに対する期待の大きさがうかがえる。国内生産の水準や雇用を維持しつつ、円高に耐える体質を構築し、地元にお返しができるのか。このチャンスを生かせなければ、技術力に定評があるだけに、世界的な企業再編のターゲットとなる可能性も出てくる。

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