石原慎太郎都知事と橋下徹大阪市長が、大阪市内で会談した。大阪都構想や次期衆院選で連携する可能性について意見交換したとみられている。
「石原新党」党首候補の石原知事が、橋下市長らの政策レジュメ「船中八策」案を評価する一方、消費税増税や原子力発電問題では、両者の主張は大きく異なっている。本当に「選挙で連携」なんてできるのか、と疑問の声もあがっている。
石原知事「(橋下氏を)私、評価している」
2012年4月4日午後、石原知事との約2時間の会談を終えた橋下市長は、記者団の質問には答えずに会場のホテルを去った。4日夕現在、会談の詳しい内容は報じられていない。
橋下市長は4月3日、「何かを決めて、とかそんなことは何もない」と4日の会談の性格について説明していた。
2011年秋の大阪市長選で、石原知事が橋下氏の応援に入るなど、2人の蜜月ぶりは目立っている。石原知事は応援入りする前、橋下氏について「彼の人材っていうのはね、私、評価している」と定例会見で話した。
2012年2月の会見でも、大阪維新の会(代表・橋下市長)版「船中八策」原案について、「大賛成のところはある」と首相公選制や参院廃止に触れ、「大変結構だ」と持ち上げた。
橋下市長も11年末に石原知事と会談した後、教育行政に「政治主導」を盛り込む「教育基本条例」問題について、「石原知事から心強いエールを送ってもらった」と話していた。大阪都構想をめぐっても、励まされたという。
「法律の壁」から今では保留状態だが、石原知事はかつてカジノ導入を公約に掲げたことがあり、橋下市長もカジノを前向きに検討している、という共通点もある。
「消費税はきちっと上げたらいいと思う」
一方、主張が異なる「大テーマ」もある。
例えば消費税増税問題だ。石原知事は2012年1月末の定例会見で、「消費税はきちっと上げたらいいと思う。上げなかったらとても日本はもたない」と述べた。3月末の会見でも「消費税を上げざるを得ない」と野田政権の増税方針を支持した。
対する橋下市長は3月29日のツイッターで、消費税を地方の税源に移すべきだとの考えを示し、「今の国の統治機構のままで消費税率を少しアップしても、蟻地獄状態からは抜け出せない」と現状での消費増税に慎重な考えを示している。税率を上げるなら、(税源として移った後で)地方が判断する仕組みが必要だと訴えている。
また、原発をめぐっても主張は「逆」だ。
橋下市長は、大阪市が関西電力の筆頭株主であることから、「速やかな原発の全廃」などを6月の株主総会で提案する方針だ。原発再稼働についても、「総選挙で決着をつけたらいい」と、再稼働に向けて進む政府をけん制している。
石原知事の方は、例えば2月10日の定例会見で、戦後を代表する思想家・評論家の吉本隆明氏(3月に死去)が週刊新潮(1月5日・12日合併号)のインタビューにこたえた記事「『反原発』で猿になる!」に触れた。
代案もなく原発に反対することは、技術開発など人間の進歩をも否定することであり、「人間はサルに戻ること」という記事だったと説明した上で、「私も同感ですな」と話した。
また、「連携」の形もはっきりしない。例えば、関東圏は「石原新党」、近畿圏は「大阪維新の会」などと住み分けるのか、それとも統合を目指すのか。民主党関係者の中では、「連携なんて本当にできるのか」といった見方も出ている。