スマートフォン(スマホ)が国内市場で広がるなか、中高年に向けた端末の開発も始まっているようだ。従来型の携帯電話では高齢者用に特化した機種が定着しただけに、動向が注目される。
ただしスマホに慣れていない世代は、機能が多くて操作が複雑になると敬遠する恐れがある。中高年層にとって理想的なスマホは、どのような形なのか。
「音声アシスタント」が中高年向け機能の主流
中高年向けの携帯電話といえば、富士通の「らくらくホン」シリーズが有名だ。基本機能に絞って、画面の文字を大きく表示したり相手の声をはっきり聞き取れる技術を用いたりと、使い勝手のよさを追求した。最新モデルでは、ボタンひとつでオペレーターが疑問点を解決してくれるサービスもある。
その富士通が中高年用スマホを開発し、2012年夏に国内で発売すると、日本経済新聞が2012年3月13日に報じた。基本ソフト(OS)に米グーグルが開発した「アンドロイド」を搭載し、高齢者層でも使いやすいようにあらかじめ機能の絞り込みや、設定作業の簡素化も図るという。血圧計のような健康測定機器と連動させて健康管理に役立てたり、見守り情報と連携させたりと、具体的な仕様に踏み込んで紹介している。
富士通広報に問い合わせると、「開発中なのは事実です」と認めたが、正式な発表はしていない。詳しい中身については回答を避けた。
「らくらくホン」を販売しているNTTドコモにも聞いてみた。利用者から「中高年向けスマホを発売してほしい」という要望の高まりは感じていないと広報担当者は説明するが、年配の顧客の一部にはニーズがあることも確かだともいう。現状では、高齢者に限らずスマホに不慣れな層に向けたサービスの開発に力を入れている。そのひとつが、スマホに向かって話しかけると必要な情報を教えてくれる「音声アシスタント」だ。「近くの病院はどこ」「東京駅までの乗り換えを教えて」などと話しかければ、文字を入力せず端末側で情報検索し、結果が表示される。類似の機能は、米アップルの「アイフォーン(iPhone)」にも搭載されている。
モバイル通信分野に詳しい武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏は、「音声アシスタント」の精度が向上している点を挙げて、将来は中高年向けスマホの機能として主流になる可能性を指摘する。声だけで主な操作ができれば、画面のどの部分に触って何を設定するのか、と悩まずにすむからだ。