外食産業や観光業が頭を抱えている。原因は、高騰するガソリン価格だ。
石油情報センターが2012年3月28日に発表した全国のレギュラーガソリンの平均価格(1リットルあたり、3月26日時点)は、6週連続で値上がりして前週に比べて2円高い157.6円。最高値は長崎県の163.2円。東京都(160.5円)や長野県(160.3円)など、8都道県で160円を突破した。
イラン情勢の影響に円安が原因
石油情報センターによると、ガソリンの平均小売価格が1リットルあたり160円に迫る高値水準を記録したのは、2008年10月14日(161.6円)以来3年5か月ぶり。イランへの経済制裁に伴う緊迫化によって、原油価格が高止まりしていることが原因だ。
原油価格の代表的な指標であるニューヨーク商業取引所(NYMEX)の米国産ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)が2012年3月20日に、サウジアラビアが増産の意向を表明したことからやや下落したが、それでも1バレル100ドルを大きく上回る状況が続いている。
さらに、最近の円安基調が原油の輸入価格を押し上げている。
石油連盟の天坊昭彦会長(出光興産会長)は3月21日の定例会見で、「2月以降、原油価格は円ベースで12円上がっているが、末端のガソリン価格の上昇は8円ほどで、上昇基調はもう少し続くのではないか」と語り、ガソリン価格はまだ4~5円は値上がりする可能性があるとの見方を示した。
また、石油情報センターも「ガソリン価格はいくらか穏やかになったが、まだ値上がり傾向にある」としており、「高止まり」の可能性もある。
一方、ガソリンの平均小売価格が3か月連続で160円を超えた場合に適用されるガソリン税の減税措置は東日本大震災以降、現在も凍結されているが、資源エネルギー庁は「凍結の解除には別途、法改正が必要になりますが、今のところ具体的な話はありません」と話している。
来店客の「相乗り」や宅配、再び流行?
ガソリン価格の上昇は物流コストなどにも跳ね返るので、今後の個人消費にも悪影響を与えそうだ。
ガソリン価格が160円を超えた北海道では、北海道消費者協会が3月13日付と19日付の2度にわたり、価格上昇の抑制を目的に、国や道に安定供給の実施や便乗値上げの監視、備蓄原油の放出などを要請した。
日常生活への影響とともに、レジャーなどで「安近短」の傾向が強まると、北海道の観光産業には大きな痛手になる。
消費者がクルマでの外出を手控えることになれば、外食産業への懸念も小さくない。ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」を展開するロイヤルホールディングスは、「今のところ、まだ客足への影響はありません」と話す。通常の割引クーポンのサービスで対応していて、ガソリン価格の高騰による対策は「とくに検討していない」という。
ただ、あるレストランチェーンは、「この冬は寒い日が続いたことで(ハウス)野菜などの価格が高めでした。今後さらに輸送費などが上がったり、高止まりしたりすると何らかの対策が必要になります」とし、「ちょうど検討に入ろうかと考えていた」と明かす。
石油情報センターによると、ガソリン価格の全国平均の最高値は2008年8月4日に記録した185.1円。このときは、「クルマでの来店時には相乗りや、宅配の利用が流行った」(前出のレストランチェーン)と話す。