日立、NYでの上場廃止申請へ 「役割終わった」薄れたメリット?

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   日立製作所が、米ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場している米国預託証券(ADR)の上場を廃止する。2012年4月中旬にもNYSEに上場廃止を申請し、原則10日後には完了する見込みだ。

   あわせて、国内でも取引量の少ない福岡証券取引所と札幌証券取引所への株式上場を廃止。これで同社株の上場は東京、大阪、名古屋の3証券取引所になる。

かさむ上場維持のコスト

   日立は1982年4月に、資金調達手段の多様化や、米国での知名度やイメージアップなどを目的にNYSEへの上場を果たした。

   当時からNYSEは「世界一、上場審査が厳しい」とされ、それが上場企業の信用力やステイタスの向上につながっていた。

   ただ、2002年7月にエンロンやワールドコムの不正会計事件を受けて行われた米国の上場企業会計改革と投資家保護法(SOX法)の制定によって、米証券取引所に上場するすべての企業に厳正なコーポレート・ガバナンスを求めたため、内部統制への対応に多くの費用と時間を強いられた。

   日立がNYSEの上場維持に費やしたコストも膨らんだ。

   一方で、日本でも証券市場の国際化が進展。いまや海外投資家が日本市場での株取引の6割超を占めるまでに増加したことや、金融商品取引法の施行(証券取引法の改正)などによって日米における情報開示や内部統制に関する規制に違いがなくなるなど、米国の証券市場に大きく近づいた。

   日本の会計基準や監査基準が未整備だったころはNYSEに上場している「価値」が高かったが、経済アナリストの小田切尚登氏は「NYSEに上場している意味が薄れていることも事実ではあります」と話す。

日本企業は「ローカル銘柄になっている」

   加えて、日立はNYSEの上場取りやめの理由を、「当社ADRの取引高が少ないことから、上場を継続する経済的合理性が低下した」と説明する。

   これについて、前出の小田切氏は「日本企業が世界的に地盤沈下して、ローカル銘柄になってきた表れといえます」と指摘する。

   株価が低迷し、売買されない銘柄を上場しておいても仕方がないし、日立自身の収益力は低下しているとなれば、「(上場廃止の判断は)自然な流れ」という。

   ソニーやトヨタ自動車など、NYSEに上場している日本企業は現在18社ある。また、これまでも上場を取りやめた企業もあって、パイオニアは2007年1月に「株式事務の合理化」を理由に、またTDKも「取扱高が少なく、上場を続ける経済的合理性が薄くなった」ことを理由に09年4月に上場を廃止した。

   小田切氏は「時価総額は(株取引の)ひとつの指標であり、グローバル企業はそれを競う時代になっています。売買が低調になって時価総額も小さくなり、勢い上場している意味も薄れてきてしまう。その点で日立が上場しているメリットは小さくなっていたのでしょう」と手厳しい。

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