韓国から越前和紙の研修に来たことも
例えば越前和紙の場合、何世代にもわたって職人が技を磨き、高い品質を保ってきた。江戸時代には日本最初の紙幣に使われ、現在でも国宝や文化財の修復といった細やかな作業でも素材として用いられる。その用途はふすまや壁紙、書画用紙、名刺と幅広く、紙の素材そのものを生かす使い方も多い。
一方で韓紙の場合、近年では「韓紙工芸」での人気が高く、紙を使った小物入れや人形、うちわなどに用いられる。紙の質も和紙と比べると厚手なため、使い道は和紙と異なっているようにみえる。和紙は日本で、韓紙は朝鮮半島で、別々に進化し続けてきたようだ。
紙をすく技術も違っていた。だがある研究によると、韓国が日本の統治下にあった時代に、当時の日本政府が紙の生産量を増大させるために、効率の悪い伝統的な韓紙の抄紙技術から日本式に切り換えさせたのだという。一方、韓紙の製法や抄紙技術が和紙に影響を与えたかといえば、「製紙技術そのものが日本に伝わってきた遠い昔は分かりませんが、少なくとも近年では特にありません」(福井県和紙工業協同組合)。むしろ一時期は、韓国から技術者が福井を訪れて、越前和紙の製法を学ぼうと研修を受けたこともあったという。