薄煕来解任は次期主席の習近平も了解済み 大規模な権力闘争は起きない 
元朝日新聞編集委員・加藤千洋さんに聞く

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王立軍氏の前任地である遼寧省で古傷が見つかる

――薄煕来氏の失脚が「本丸」だったことは分かりましたが、では、王立軍事件は、何故起きたのでしょうか。

加藤 薄煕来氏が右腕として抜擢したのが王立軍氏です。「打黒」運動で強引な捜査をしていたことがじょじょに明らかになってきました。政治局常務委員の一人である賀国強氏は、以前は重慶市のトップだったのですが、薄煕来氏が賀国強氏の権益に手を着けたことに対する警戒感があるようです。そこで賀国強氏が巻き返しに出たとの見立てもあります。王立軍氏の前任地である遼寧省で古傷を探したところ、「あった」。奥さんや実弟も捜査対象になり、王立軍氏は薄煕来氏に援助を求めたが、薄煕来氏は冷たくあしらった。王立軍氏は2月2日には公安局長の座を解任され、思いあまって、「打黒」の捜査で集めた最高指導部に関わるネタを持って、成都の米国総領事館にかけこんだ。公式発表がない中で、こうした見方が出回っています。

―― 駆け込み事件直後の2月13日には、習近平氏の訪米が控えていました。米国としても、難しい判断を迫られたのではないですか。

加藤 中国側は「身柄を戻さなければ、訪米を取りやめる」と脅しをかけた可能性もあります。米国は人権を外交の看板にかかげているので、亡命を求めた人間をそのまま返すことはできない。米国側は、「いきなり処罰の対象にしない」などの条件をつけて、最終的には受け入れずに追い返したのではないでしょうか。

加藤千洋さん プロフィール

   かとう・ちひろ 同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。1972年、朝日新聞入社。大阪本社社会部を経て北京特派員、アジア総局長、中国総局長などを経て外報部長。編集委員。2004年から08年まで「報道ステーション」(テレビ朝日系)コメンテーター。一連の中国報道で99年度ボーン上田記念国際記者賞。

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