かつて世界を席巻した日本のゲーム産業。「クールジャパン」の一つとして評価されているといった報道もあるが、海外のゲームクリエイターに言わせれば最近の日本のゲームソフトは「クソ」なのだそうだ。
確かに業界の売り上げは下降の一途を辿っている。このような酷評も出てしまうほど日本のゲームはダメになってしまったのだろうか。
日本市場に受け入れられることばかり考える
コンピュータエンタテインメント協会(CESA)の調査によれば、ハード、ソフトを含めた家庭用ゲーム出荷金額は2007年が約2兆9364億円だったのに対し、2010年は1兆7974億円に激減。ソフトでは07年が国内約2886億円、輸出が約5600億円で、10年は同2590億円、同4114億円と下降線をたどっている。
任天堂の「ファミコン」から始まり世界を席巻してきた日本のゲーム産業。ソフトでは「マリオ」「ドンキーコング」「パックマン」「ポケモン」などが世界で大ヒットし、「バイオハザード」はハリウッドで何度も映画化された。ただし、例えば「マリオ」が登場してから約40年、比較的新しい「バイオハザード」でも15年が過ぎていて、世界のゲーマーが飛びついたという新作の話はとんと聞かなくなった。
そうしたなか、12年3月上旬に米サンフランシスコで開催されたゲーム開発者会議(GDC)で、日本の最近のゲームソフトをどう思うか、と質問された、カナダ人のフィル・フィッシュ氏が、
「日本のゲームはクソ(Your games just suck)」
と発言した。同氏は「FEZ」というゲームを開発している著名なインディーズゲームクリエイター。
このニュースが世界中に配信され、氏の「ツイッター」に批判が殺到、「炎上」騒ぎになった。フィッシュ氏は非礼を詫びたものの、「日本のゲームはつまらない」という考え方は変えなかった。
「日本のゲームはつまらない」と主張しているのは彼だけではない。イギリスのゲームマガジン「Edge」ウエブ版に3月28日、ゲームソフト「Silent Hill」で有名な作曲家でゲームクデザイナーの山岡晃さんと、ハンガリーDigital RealityのクリエイティブディレクターTheodore Reiker氏のインタビューが掲載された。その中で、山岡さんは日本のゲームソフトが海外で受け入れられなくなったことについて、
「これまでの日本的制作手法に限界が訪れているため」
と説明している。つまり、日本市場に受け入れられることばかり考え、世界のニーズをないがしろにしている、というのだ。
日本のゲームはハリウッドに敗れた西洋映画と同じ?
Reiker氏は、日本のゲームは確かに世界を支配し、今もクリエイター達は頑張っているとは思うが、「時代は変わっています」と指摘する。
「ヨーロッパ映画がハリウッド映画の台頭で衰退したのと似ています。海外の超大作ゲームや、SNSに日本のゲームは負けたのです。これからどう復活するのか楽しみです」
海外だけでなく日本のゲーム市場も縮小し続けている。かつては1兆円といわれる日本の市場を制したゲームメーカーが世界を制すると言われた時代もあり、メーカーは国内重視を貫き、海外には目を向けてこなかった。海外子会社もソフトの販売拠点が殆どで、海外をターゲットにしたソフト制作には力を入れてこなかった。
日本で絶大な人気の「ドラクエ」といったRPGは海外では需要が低く、一方で、スポーツやガンシューティングといった海外での人気ジャンルの商品は出なかった。
その結果、海外市場は外国メーカーの草刈場となり、日本では人気の低いマイクロソフトのゲーム機「XBOX360」が、ソニーの「PS3」販売台数を抜き去るという事態さえ起きてしまった。
しかし、これから国内向けと海外向けの2本のラインで開発を進めればいいのか、となるとこれも難しい。長引く不況と大ヒット作が生まれにくくなった現在では、メーカーにそれだけの体力が残っているか、が疑問だからだ。
「日本のゲームはクソ」の発言に対しネットでは、
「アメリカのゲームも糞だろ 銃ひたすらぶっ放すか、箱庭で殺す、の繰り返し。ゲームに国民性が出てるだけ」
「日本のゲームが糞って事はないだろうけど 海外のゲームファンに背を向けてる事はわかってた」
「日本のゲームは大作嗜好、作家嗜好が強くなってからおかしくなった。ゲームは所詮ゲームと割り切って子供の玩具に徹してたころのほうが面白いものを作ってた」
などの意見が出ている。